メーカー(製造業)には自動車、電機、食品……などさまざまな業種がありますが、いずれも「商品をつくって顧客に届ける」という点は共通です。では、商品の開発プロセスは、どのようなものなのでしょうか? メーカーを目指す人ならぜひ知っておきたい基本について、書籍『全図解メーカーの仕事 需要予測・商品開発・在庫管理・生産管理・ロジスティクスのしくみ』から紹介していきます。

メーカーにおいて、商品開発は大きく四つのステージに沿って進んでいきます。商品開発に慣れた担当者はあまり意識していませんが、さまざまな業界において、おおまかには同様のプロセスを経て、商品は開発されます(図4-2)。

メーカーに就職したい人なら知っておきたい「商品開発の4つのステージ」とは?図4-2 商品開発の4ステージ(コンビニのバウムクーヘンの場合)
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<四つのステージ>

◆ステージ1.チャンスの定義(Opportunity development)
メーカーが商品を通じて満たすべき顧客ニーズを明確にする。顧客のニーズ、つまりどんな不満を抱えているかを、調査や市場分析によって整理する。市場が何を求めているかを明らかにするステージでもある。このとき、競合商品にはどのようなものがあるのか、自社の設備や能力で提供できる商品はどんなものなのかなどを踏まえ、どこにビジネスチャンスがあるのかを明確化する。狙う市場の大きさや成長性、競合のビジネス展開の度合いによっても成功確率が大きく変わるため、それらも調査する。

◆ステージ2.コンセプト設計(Concept development)
商品のコンセプトが設計される際には、開発や製造にかかるコスト、商品のサイズ、重さなども含めて、生産の実現可能性が検討される。開発する商品は、顧客のニーズを満たすと同時に、メーカーの予算やスケジュールの中で実現できる必要がある。また、コストを試算するには、顧客のニーズの大きさを踏まえる必要があり、この時点で最初の需要予測が行われる場合もある。

◆ステージ3.ディテール構築(Subsystem engineering)
商品は基本的に複数の部品・原料からなるが、それらの構築と評価を行う。この後のステージで改良されていくものの、ここでいったん商品の基礎的な設計ができ上がる。試作品やパソコン上でモデルを作り、効率的に商品設計を進化させることが可能になる。

◆ステージ4.商品改良(Refinement)
商品開発における改良には3種類がある。一つめは、ステージ3で構築した部品・原料を組み合わせた、商品全体としての改良(System Refinement)である。ここでは、顧客に試作品を評価してもらうこともあり、ベンチマークとして想定したライバル商品との比較なども行われる。一定の基準を満たさないと次のステージに進むことができず、ここで止まってしまう商品開発も多くある。

二つめの改良は、大量生産の観点から行われる(Producibility refinement)。試作品を作ることと異なり、商品として市場に供給するとなると、大量に生産する必要がある。一定の品質を保ちつつ、大量に商品を生産するのは簡単ではない。

最後の改良は、発売後に行われるもの(Post-release refinement)である。具体的には、生産コストの削減や新しい機能の追加、欠点の補強などが行われる。品質トラブルへの対応などもあるが、顧客の期待を大きく下回る商品を発売してしまった場合、せっかく開発した商品がすぐに市場から撤退することになる。

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ヒットする新商品とそれ以外では、ステージ1と2にかけるコストや時間が2倍程度異なるという調査結果もあります。このため商品開発の初期ステージにおいて、しっかりと顧客ニーズを考え、それに対応する自社の技術の評価もしておくことが重要です。これと並行して商品に関係する法律の確認も行われ、後の需要予測や生産計画、輸配送計画などやプロモーション計画の立案につながっていきます。

商品開発のステージの整理の仕方はほかにもありますが、基本的には①顧客ニーズの調査、②コンセプト設計、③開発(この中の分け方は複数ある)、④テスト・評価といった順で進んでいきます。