プレゼン後に質問が殺到すると
喜ぶアメリカ人、ビビる日本人
筆者が米国の大学院で勉強していた頃、学会や研究会で自分の研究発表を行なう機会が何度かあった。当然のことながら、聴衆のほとんどはアメリカ人の大学生や大学院生、それにプロの研究者たちだ。
ネイティブスピーカーでもなく、20代後半になってから初めて渡米した私の英語は、お世辞にも上手いとは言えなかったし、英語での発表にも慣れていなかったため、緊張で口から心臓が飛び出そうになったのを今でも思い出す。
中でも怖かったのは「質問」である。
「答えられないような質問が来たらどうしよう」
「大御所の先生から批判されたらどうしよう」
「相手の英語がわからなかったらどうしよう」
そんなことばかり考えていた。そして驚いたのが、そんなプレゼンを何とか終えた後の、アメリカ人の友人の反応だった。
「プレゼン、すごく良かったよ。その証拠にたくさん質問もらっていたよね」
こちらとしては、できれば質疑応答は避けて通りたかったのだが、アメリカ人の感覚では「質問がない」方が失敗だと思い、落ち込むのだ。日本人とは大きな違いである。
このような緊張する場面について、社会人として似たような経験をした人は多いだろう。上司に話したり、社内外でプレゼンをしたりするときに、頭が真っ白になってしまったなどという話もよく聞く。
こうした状態は「あがり症」と言われることが多い。人前で話すと緊張を感じるのは異常なことではないが、その程度が強くなって、赤面したまま話せなくなったり、ろれつが回らなくなったり、異常発汗やめまいなどの症状が出ると、それは「社会不安障害」という病気と診断されることがある。いわゆる対人恐怖症というものだ。