ノートパソコン(PC)がデスクトップPCの出荷台数を抜き去る日が間近に迫ってきた。米インテルのプロセッサ(中央処理装置)の出荷数が、2008年4~6月期に同社としては初めて、ノート用がデスク用を上回ったのだ。

1年以内にノートPCがデスクトップPCを上回る「昨年後半からノート用の伸びが顕著になってきた」と江田麻季子・インテル株式会社マーケティング本部長は言う。

 ノートPC市場は、技術水準の向上によって低価格化が進み、デスクトップPCとの価格差がなくなったことで、ここ数年急拡大している。日本、米国、欧州などの先進国市場では、1家に1台から1人1台へという流れのなかで2台目需要として、BRICsに代表される新興国市場では、1台目のPCとしてノートPCが普及している。

 米調査会社IDCによると、07年初頭にはPC全体の4割にも満たなかったノート市場が、09年1~3月期にはデスクトップ市場を上回ると見られている(上のグラフ参照)。「主役交代」の日は近い。

 この動きに拍車をかけているのが、画面サイズが10.2インチ以下で価格が500ドル前後の低価格ミニノートPCの普及だ。

 昨年10月に台湾PCメーカーのASUS(アスース)が300ドルを切る格安ミニノートを発売してブームに火がつき、その後、米ヒューレット・パッカードや台湾エイサーなど大手PCメーカーが続々参入して市場が急拡大している。「想定より需要がはるかに大きい」(インテル・江田本部長)ため、同社のミニノート用プロセッサ「Atom(アトム)」は、供給が追いつかない状態だ。

 インテルでは、12年にAtomの出荷数がデスク用とほぼ同じ約2億個まで拡大すると予測している。つまり、今後4年間で、ノート、デスクに次いで低価格ミニノートが第3の市場として立ち上がると見ているのだ。

 そうなれば、「事業規模が大きく価格競争力に勝る上位PCメーカーの寡占がさらに進む」(浅野浩寿・IDCジャパンPCsシニアマーケットアナリスト)可能性が高い。

 主役交代と新市場の拡大。激変する競争環境に適応できなければ、淘汰されるだけだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 前田剛)