『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』唯一の公式サブテキスト『【電子書籍限定】『独学大全』公式副読本』が発売された。この一年間に集まった様々な独学の悩みを解決するとともに、『独学大全』英語、国語、数学、経済学、歴史……など、それぞれの学問分野の学びにどう生かすかについて、徹底的に解説している。「読書猿 百問百答」から、一部を公開する。

「話すのが苦手」な人が見逃している会話の本質Photo: Adobe Stock

[質問]
「話して伝える」のが苦手です。文章にすると、ある程度論理的に書けるし考えも整理できるのですが。これも、日本語の能力が低いのでしょうか? 対策はありますか?

「話す」と「書く」は伝え方が全く違います

[読書猿の回答]
 話し言葉はそもそも何かを伝えるようにはできていません。あなたの困難は、別の言葉である、話し言葉と書き言葉を区別した上で、うまく関係づけることに失敗しておられるからだと思います。

 書くように話すと、相手が文章を書く人でない限り、ほとんどのことは伝わりません。

 話し言葉は、たとえるなら、楽譜のないジャムセッションのようなものです。あらかじめ取り決めがなくとも、なんとか続いていくのは、相手の発する音を聞くこと、伝えるよりも打ち返すこと、そうして言葉のラリーが続くよう場を構築するようにお互いが参加するからです。

 会話の順番の受け渡しなど、会話を成り立たせる微妙で不断の調整過程は、あえて会話が続かないように振る舞ってみると、明らかになります。また、そうした目で、他人同士の会話を(その内容ではなく相互調整に着目して)観察してみるのも学びが大きいでしょう。

※この記事は、『【電子書籍限定】『独学大全』公式副読本』からの抜粋です。