山口県下関市にある赤間神宮。壇ノ浦の戦いで散った平家一門を祀る塚がある。山口県下関市にある赤間神宮。壇ノ浦の戦いで散った平家一門を祀る塚がある Photo:PIXTA

『平家物語』の登場人物である平重盛は、激情家である父・清盛とは対照的に穏やかな性格だと考えられてきた。だが実は、重盛は感情を前面に押し出した説得術に長けており、現代の「論破王」ひろゆき氏に通じる切れ味を持っていた。その言い回しとは…。(歴史学者 濱田浩一郎)

アニメで脚光の『平家物語』
平清盛・重盛親子は真逆の性格

 2022年1月、フジテレビ系列で『平家物語』のテレビアニメが始まり、平家の盛衰が再び脚光を浴びている。アニメで主人公の少女・びわと接点を持ち、重要な役割を果たすとされる平重盛は、あの悪名高い平清盛の息子である。

 父・清盛と息子・重盛は、実は性格が大いに異なり、意見が対立することもあった。清盛は激情家だったと考えられているが、重盛はアニメ公式サイトの紹介欄に「人格者として広く尊敬を集める」と書かれている通り、穏やかな人格だったという。

 原作の『平家物語』をひもとき、“親子げんか”の描写を見てみると、こうした両者の違いがよく分かる。冷静な息子が熱い父親をいさめる場面では、現代の仕事や対人関係でも通用しそうな論破術も使われている。その様子を詳しく見ていこう。