腸内環境を整える
低FODMAPの食事とは

 ではどうすればおなかの調子を治せるのか。

「2005年にモナッシュ大学のギブソンは難消化性発酵性食品(フォドマップ)によって慢性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)が悪化すると仮説を立てました」

 FODMAPは小腸で消化吸収されにくい糖類や繊維類の頭文字(Fermentable:発酵性、Oligosaccharides:オリゴ糖、Disaccharides:二糖類、Monosaccharides:単糖類、Polyols:ポリオール)を取ったものだ。

 過敏性腸症候群はFODMAPが大腸で発酵し、水素などの大量のガスを発生させることが原因らしいのだ。そのため、FODMAPを減らす食事制限によって腸内環境を整える必要がある。

「2010年、過敏性腸症候群の人にオリゴ糖などのFODMAPを与えると非常に調子が悪くなり、さらに、これらの食物を摂取制限する低FODMAP食が過敏性腸症候群や慢性炎症性腸疾患の症状改善に有効だということがわかりました」

 小腸までで吸収されない難消化性炭水化物は過敏性腸症候群にとって不利益でしかない。過敏性腸症候群やその予備軍の人は繊維質を避ける食事に変える必要がある。6週間の低FODMAP食で過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎の腹部症状が大幅に改善することが確認されている。

 日本ではあまり知られていないFODMAPの害だが、低FODMAP療法に明るい医師も増えつつある。また最近はFODMAPの少ない米粉やスペルト小麦を使用したパンが普及してきている。今後、低FODMAPの小麦フリー、乳糖フリーなどに関心が持たれると社会の意識も変わっていくだろう。

 乳酸菌を飲んだらおなかが張って仕方がないという人は、ヨーグルトなどは避けた方がいい。

(監修/日本低フォドマップ食推進会会長、日本消化器病学会指導医・専門医 宇野良治)