『週刊ダイヤモンド』1月29日号の第1特集は「薬剤師31万人・薬局6万店 大淘汰」です。薬剤師は将来、最大12.6万人過剰になる――。厚生労働省にこう予測された薬剤師は変革を迫られ、淘汰の荒波が襲い掛かっています。現場で疲弊する薬剤師に、覆面座談会で本音を暴露してもらいました。(ダイヤモンド編集部 山本興陽、大矢博之)
◎参加者プロフィール・いずれも首都圏勤務の薬剤師
A氏 中堅ドラッグストア 街中店舗勤務 30代 女性
B氏 中堅調剤薬局 門前薬局勤務 40代 男性
C氏 大手ドラッグストア 病院門前勤務 30代 男性
D氏 超大手ドラッグストア 大型店調剤部門勤務 20代 女性

全国職は家賃補助9割、地域職はゼロ…
薬剤師が語る「ヒエラルキー」のリアル

薬剤師が語る「ヒエラルキー」のリアルとは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

──薬剤師の世界にはどういった「ヒエラルキー」がありますか。

 薬剤師に限らないんでしょうけど、転勤を伴わない地域職と、転勤を伴う全国職などの採用区分による待遇格差は大きいです。

 例えば家賃補助。全国職の薬剤師には家賃が9割とか出るのに、地域職には1円も出ないことも。ボーナスも結構差があって、年収にすれば全国職は地域職の1.5倍くらい違うイメージ。地域職の管理薬剤師より、全国職の新人薬剤師の方が給与は良いケースもあるみたいです。

 裏を返せば、それだけ待遇を引き上げないと全国職が集まらないんですよね。首都圏エリアの地域採用枠は常にすぐ埋まると聞きます。女性が多い世界だから、転勤を希望する絶対数があまり多くないというのもありますよね。

 男の薬剤師のヒエラルキーは低いですよ……(小声)。

医師、看護師、臨床検査技師の次
想像以上に低い薬剤師の“序列”

 ヒエラルキーといえば、病院は外せないですよね。一般の人は、病院内のヒエラルキーについて医師の次は薬剤師、看護師の順だと考えていると思います。ですが実態は、医師の次に看護師で、その次は臨床検査技師。次にようやく薬剤師で、地位は想像以上に低いと感じます。

 私は前職が病院の薬剤師だったのでよく分かります。看護師から薬剤師への当たりがきつく、人間関係に悩む人は多いのではないでしょうか。看護師は、「患者に寄り添って理解しているのはわれわれだ」というプライドがあるのでしょうね。確かに、薬剤師は調剤室で薬と向き合う時間が多いですから、これは仕方ないですよね。

※覆面座談会の前編はこちら『薬剤師の悲痛な叫び!“日医工ショック”で薬集め、医師へ照会したら「電話してくんな」【覆面座談会】』

大淘汰時代の幕が開けた薬剤師・薬局
リストラや「年収・出世」事情を徹底調査

 『週刊ダイヤモンド』1月29日号の第1特集は「薬剤師31万人・薬局6万店 大淘汰」です。薬剤師は2045年には最大で12.6万人過剰になる――。厚生労働省は2021年夏、“薬剤師余り”の警鐘を鳴らすこんな衝撃の試算を発表しました。

 薬局数はついに6万店を超え、増え過ぎた薬局を“選別”する施策が矢継ぎ早に繰り出されています。処方箋に従って薬を出すだけで安泰だった薬剤師・薬局の世界は終わりを告げ、大淘汰時代の幕が開きました。

 コロナ禍で倒産が過去最悪を記録した調剤薬局。21年8月には国が“お墨付き”を与える新たな制度が始まったほか、コロナ経口治療薬の供給先リストに掲載されるかどうかという、国策“選別”が本格化しています。

 特集では淘汰の荒波に耐えようともがく薬局やドラッグストアなどの取り組みを徹底取材。また将来を不安視し身売りを検討する薬局経営者も相次ぐ中で、M&Aで売れる薬局・売れない薬局の「3つの条件」が見えてきました。

 これまで薬を出すだけで安泰だった薬剤師の将来性に暗雲が立ち込めます。将来の薬剤師に必須になるかもしれない卒後研修の実験が水面下で始まりました。

 特集では就職先や47都道府県別の「年収格差」など、薬剤師の年収・出世事情を大解剖。また、現場で疲弊する薬剤師たちに、日常の不満や改善点などを、覆面座談会で暴露してもらいました。

 さらに、薬剤師が増えた一因は、薬学部の乱立です。薬学部の新設ラッシュに大学は沸く裏で、定員割れなど“粗悪”な薬学部も目立ち始めました。薬剤師“過剰時代”の到来を控え、薬学部にも淘汰のメスが入ろうとしています。

 そこで、国家試験合格率や“留年率”などのデータを基に、55私立大薬学部の「淘汰危険度」ランキングを作成。生き残る薬学部の条件に迫りました。

 生存競争が激化する薬剤師・薬局・薬学部の最前線を追った一冊です。ぜひご一読ください。