資格喪失の規定が見直され
加入者の希望で脱退できることに

 国民皆保険制度をとっている日本では、この国で暮らすすべての人に、何らかの公的医療保険(健康保険)に加入することを義務付けている。

 75歳未満の人の加入先は、職業によって決まっており、会社員は勤務先の規模などに応じて、全国健康保険協会(協会けんぽ)、組合管掌健康保険(組合健保)のいずれかに加入している。だが、勤務先の健康保険の加入資格は、退職と同時に失われてしまう。

 とはいえ、病気やケガは、その人の就労状況に関係なく、突然にやってくるものだ。そのとき、医療費や療養中の生活費をカバーできる保障がないと、医療費が払えないために、受診をためらうことが心配される。その結果、病気が悪化し、働けなくなり、生活が困窮していくという負のスパイラルに陥る可能性がある。こうした状況を避けるためにも、日本では失業中で収入がない人にも、健康保険に加入することを義務付けているのだ。

 退職後、すぐに再就職する場合は、新しい勤務先で健康保険の加入手続きをしてくれるので心配はない。だが、再就職しない場合は、その他の健康保険への加入手続きをしなければならない。このときの選択肢には、「会社員の家族の被扶養者になる」「国民健康保険に加入する」というものがあるが、多くの人が選んでいるのが、今回改正された任意継続被保険者制度だ。

 任意継続被保険者制度とは、会社員が仕事を辞めた後も、退職した勤務先の健康保険に引き続き加入できるというもの。労働者のための健康保険が、全面的に施行された1927年当時から存在する仕組みだ。

 当初、任意継続被保険者の加入期間は最大6カ月間だった。だが、戦後の高度経済成長を背景に給付の充実が図られ、1976年に最大2年に延長された。

 その後、複数回の制度改正を経て、2021年12月までは次のような制度内容になっていた。

 この中で、2022年1月1日から変更された部分が2つある。「資格喪失」と「保険料」の部分だ。