任意継続被保険者制度の加入期間は、最大で2年間だ。その間に、加入資格を喪失するのは、「死亡」「保険料の滞納」「再就職」「75歳になる」のいずれかしかない。加入者の希望によって自由に脱退することはできなかった。この規定が見直されて、2022年1月からは、加入者からの申し出によって、2年間の途中でも任意継続被保険者制度を脱退できるようになった。

 もうひとつ、変更されたのが、保険料の算出方法だ。

 これまで、保険料の算定基準となる標準報酬月額は、「1.退職時の本人の標準報酬月額」または「2.加入者全体の標準報酬月額の平均」の、どちらか低いほうの金額で、これに一定の保険料率を掛けて計算されていた。

 だが、今回の見直しで、この2つに加えて、「退職時の標準報酬月額未満の範囲内の金額」を、それぞれの組合で自由に決められることになった。退職時の標準報酬月額の範囲内なら、複数段階で設定することも可能だ。

戦後の無保険者対策でできた任意継続保険者制度
「本来の意義は失われた」と廃止議論も

 このような見直しが行われた背景には、時代の流れによって、任意継続被保険者制度の内容と利用実態が合わなくなり、いくつかの矛盾が生じてきているからだ。

 前述のように、労働者のための健康保険法が全面施行されたのは1927年だ。国民健康保険がスタートしたのが1938年なので、労働者の健康保険の創設当初は、他には公的な医療保険がなかった。仕事を辞めると医療保障を得られる手だてがなかったのだ。そこで、仕事を辞めた後も、工場などに雇用されていた労働者が、当面の医療保障を確保できるようにするために任意継続被保険者制度が作られたというわけだ。

 だが、戦後、離島を除いてすべての市町村に国民健康保険が作られ、1961年には国民皆保険が実現した。現在は、被用者とその家族を除くすべての人が国民健康保険に加入できるようになっている。制度上は、仕事を辞めた無職の人の加入先は国民健康保険ということになる。

 任意継続被保険者制度の見直しについて話し合っていた厚生労働省の審議会でも、「現在は国保の移行に伴う保険料負担の激変緩和が主な実態となっている。制度本来の意義が失われた以上は、廃止の方向で議論することが自然の流れである」といった意見も出されていた(厚生労働省 2020年3月26日「第127回社会保障審議会医療保険部会」資料より)。

 とはいえ、現実的には任意継続被保険者制度を利用している人は多く、簡単に廃止することはできない。それは、急激な保険料負担の上昇を避けるために、任意継続被保険者制度が利用されているという切実な問題があるからだ。