加入者の標準報酬月額の平均は30万円なので、事業主負担分を含めた保険料の全額は3万4920円だ。月収60万円だった人は、本人の退職前の標準報酬月額ではなく、加入者平均を基に保険料を計算されるので、退職前とほとんど変わらない保険料で任意継続被保険者制度に加入できることになる。

 現役時代の所得が高い人は、往々にして年金も高いが、任意継続被保険者制度に加入すると保険料が低く抑えられ、社会保険の応能負担の原則に照らし合わせても矛盾が生じてしまう。

22年改正で、所得の高い人の
任意継続保険料負担が倍増する可能性も

 これらを正すために、最大2年間の加入期間は維持しつつ、加入者の希望によっても途中で脱退できるようにしたほか、年金収入の高い人などの保険料負担を引き上げられるように保険料要件を見直したのだ。

 多くの人に社会参加を促し、年齢に関係なく、すべての世代の人が能力に応じて負担し、必要に応じて給付を受けるという全世代型の社会保障の実現のためには、今回の見直し内容は妥当なものといえる。ただし、所得の高い人は任意継続被保険者の保険料負担が、これまでよりも増える可能性はある。

 これまで、任意継続被保険者制度の保険料は、最大でも加入者全体の標準報酬月額の平均を基に計算されていたが、今後はそれぞれの組合の判断によって「退職時の標準報酬月額未満の範囲内の金額」まで引き上げることが可能になっている。前出の標準報酬月額が60万円のケースでは、月額保険料が6万8676円まで引き上げられることになる。

 同時に、高額療養費の所得区分も、所得に見合ったものに引き上げられるので、病気やケガで医療費が高額になった場合の自己負担額にも影響が出る。

 当面は、これまでの保険料の仕組みを維持し、引き上げには慎重なところが多そうだが、今後、財政事情が厳しくなってくると、任意継続被保険者の保険料の引き上げも視野に入ってくる可能性がある。自分の勤務先の健康保険はどのような対応をとるのか。それぞれの組合の今後の見直しに注意を払いたい。