飼い主の留守中に起きた愛犬撲殺事件

 当局の手によって、飼い主から引き離されたペットが撲殺されるという痛ましい事件もあった。2021年11月、江西省上饒市信州区で、飼い主の隔離期間中に自宅に残された飼い犬のコーギー犬が、防疫当局の担当者によって殺処分されてしまったのである。

 11月12日の深夜、姓を傅(フ)と名乗る女性は、当局からホテルでの集中隔離を指示する通知を受け取った。女性がいる居住区で新型コロナウイルスの感染者が発見されたためだ。中国では居住区内で1人でも感染者が出れば、全員がホテルに移動させられ集中隔離を受けるが、女性が住む信州区はペットの帯同を禁止していた。

中国のゼロコロナ政策で犠牲になるペットたち、殺処分は感染防止になるのか一団の土地に何棟もの高層住宅が建つ小区。一人でも陽性者が出れば集団隔離となる

 傅さんは犬を飼っていることを当局者に伝え、自分が隔離されている間は決して処理(殺処分)しないよう懇願していた。だが、室内に設置したカメラが捉えたのは、防護服を着た2人の防疫担当者が女性の同意を得ることなく自宅に侵入し、コーギー犬を金属棒で殴るシーンだった。

 室内で起こった事件の一部始終をスマホ操作で確認した傅さんは「うちの犬が殺されたかもしれない」と、直ちに動画をSNSに投稿した。

 5年も一緒に過ごしたコーギーだったが、女性は二度と愛犬を抱きしめることはできなかった。この撲殺事件は、中国全土で深い同情と大きな波紋を呼んだ。