なかなか立法化しない「動物虐待防止法」

 コロナ禍で集中隔離が行われる際、中国ではペットたちは置き去りにされたが、先進国では事情が違う。「動物福祉の意識が高い諸外国では、動物を置き去りにすることは虐待と解釈される可能性が高い」(渋谷弁護士)。日本でもペットを置き去りにすれば、「動物の愛護及び管理に関する法律」の中の「愛玩動物遺棄罪(第44条第3項)」により罰則が適用される。

中国のゼロコロナ政策で犠牲になるペットたち、殺処分は感染防止になるのか深センの工場跡地内を自由に闊歩する猫。“野良たち”は無事だろうか

 実は、中国には動物虐待を取り締まる「反虐待動物法(動物虐待防止法)」がない。コーギー犬を撲殺した当局者の処分が異動にとどまったのは、こうした理由もあるからなのだろう。

 全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)では、2017、18、20、21年にわたり「反虐待動物法」の立法化を求める議案が提出されたものの、4回にわたり廃案となった。その一方で、中国の公益団体が中心となって行った同法の立法化を求める署名活動では1000万回分の拡散がなされ、わずか4日で100万人の署名が集まった。

 中国には「動物の前に人間の命が重視されるべき」という主張もある。背後には「人としての権利すら十分に保護されていない」とする“国情”もあるためだ。それでも、動物虐待に反対する国民の声は日に日に無視できないものになっている。

「ペットとの同行隔離」の要求が強まるコロナ禍の中国では、地方政府も民意をないがしろにはできなくなってきている。人々の思いは社会をどう変化させるのか。今後に注目したい。