そもそも「メタバース」とは?
概要をざっくり説明

 メタバースというのは現実世界とは別の生活を送ることができる仮想空間のことです。アニメが好きな方は細田守監督が『サマーウォーズ』や『竜とそばかすの姫』などの映画作品でメタバースを題材にしているので、それを思い出せばある程度、未来についてのイメージが湧くかもしれません。

 自分とは違う人格やキャラとして、この世界とはまるで違う空想世界で暮らし、そこで友人がたくさんでき、おそらく敵もたくさんいて、現実世界よりもずっとエキサイティングな日々を送ることができる仮想空間です。

 メタバースでは鎌倉のシェアハウスで海を見ながら、新しい仲間たちと共同生活を始めるような別の生活が楽しめるでしょう。それだけでなく、イベントではジャニーズやK-POPアイドルのコンサートのステージに一緒に上がってダンスしながらライブを楽しめるかもしれません。ビジネスでは、副業でまったく異業種の企業の商品開発会議に出席して、アイデアを提供する仕事につくようになるかもしれない。

「現実社会ではもう自分のこれからの人生の先々が見えてしまった」という残念な感覚と比較すれば、仮想世界にもう一つの人生を期待する莫大なユーザーニーズが存在することは間違いありませんし、それがイベント、旅行、リアルなビジネスなどさまざまなエリアで経済圏を拡大する未来が予想されています。

 概念的には1980年代から提唱されてきたそのメタバースが今、バズワードになっている理由は、技術が追い付いてきたことに加えて、現実にメタバースができはじめていることです。

 日本で一番有名な(?)メタバースが何かご存じですか?定義にもよると思いますが、読者のみなさんに一番ポピュラーな存在は任天堂の「あつまれ どうぶつの森」でしょう。これまでの累計販売本数は3000万本を超え、結構な数のユーザーが「あつまれ どうぶつの森」の世界で生活をしています。

「あつまれ どうぶつの森」が発展したことで、実はいろいろな社会問題が起きるようになります。たとえばリアルマネートレードといってゲーム内で手に入れたレアアイテム、ないしはアカウントまるごとを現実の金銭で売買するケースが問題視されるようになりました。

 アメリカの大統領選挙では、バイデン候補が「あつまれ どうぶつの森」の中に選挙本部を開設しました。そこまではOKだったのですが、政治家の石破茂さんが「じみん島」で政治活動を始めようとしたところ任天堂からNGが出されました。日本の任天堂の規約では政治活動は禁止されていたのです。

 任天堂の現在の規約ではリアルマネートレードも禁止されているのですが、ここはメタバース経済の未来のビジネスモデルにあたって、大きな論点となるでしょう。

 参加者の持つ土地やキャラ、アイテムは成功したメタバース経済では億単位の経済価値を持つようになります。そしてそのようなマネーの魅力が、メタバースを広げるための誘因になることも間違いありません。

 つまり、ゲームだと考えれば禁止される行為も、メタバースだと考えたら将来的には逆のルールができていくのではないかと私は思います。