また、ボトムアップ型に変えていく中で、新たな問題も起きています。

 昔は経営トップが多くのことを決めていたので会議は少なかったのですが、今では会議の数がものすごく増えましたし、議論はするけど結論が出ない会議も多くなっています。中には、何のためにやっている会議かわからないものもある。それでも、変革には必要な過程だと考え、あえてやらせています。

 こうした取り組みの結果、今後、もしかしたら部分的にトップダウン型を導入するかもしれません。ボトムアップとトップダウンの間の最適なバランス点は時代や経営環境によって変化するでしょうから、試行錯誤を繰り返しながら、常に変化対応していかなければなりません。とはいえ、以前のようなトップダウン型の組織に戻すことはないと思っています。

すべての役割に価値がある
「全員野球」でチーム力を向上

 私がいうボトムアップ型の組織とは、わかりやすくいえば「全員野球」です。

 各ポジションには与えられた役割がありますよね。

 会社も同じです。営業部門でナンバーワンになったとか、商品開発部門でヒット商品を生み出したなど、スポットライトを浴びる花形部門もあれば、総務や経理のように、花形ではなくても組織運営に必要不可欠な部門もあります。

 野球で例えると、4番バッターばかりを集めても勝てないですよね。野球チームにも2番で確実にバントできる選手も必要です。先発ピッチャーで注目を集める選手もいれば、中継ぎもいる。チーム全体で言えば、監督、選手以外にも、さまざまな裏方の人がいる。

 会社も野球も、無駄な役割は何一つなく、全員が参画してチーム力を発揮する必要があるのです。そのためには、たとえば評価のあり方などを含め、すべての仕事が無駄ではないと気づかせる必要があると思っています。

 ちなみに「全員野球」というと、全社員が社長の気持ちでプレーすると誤解されるのですが、そうではありません。

 社長というのもポジションの一つです。人にはそれぞれ得手不得手がありますから、それぞれが得意なポジションで活躍すればいいんです。