プロダクトアウトから
マーケットインへ

 トップダウン型からボトムアップ型へ組織を変えるとともに、商品開発のあり方もプロダクトアウトからマーケットインに変えました。

 そのための取り組みの一つが、2015年に設立したマーケティング総合戦略本部(16年にマーケティング総合企画本部に改称)です。

 当社には長らくマーケティング部門がありませんでした。営業企画部門と研究開発部門が、それぞれマーケティングも行っていたのです。

 とはいえ、多くの意思決定をするのは社長でした。幸い、前社長はセンスがあったので、鶴の一声で、「これやれ」とか「あれ変えろ」といって、それでうまくいったのです。

 しかし、私にそのセンスがあるかわからないし、私の次の社長にもセンスがあるかわかりません。だから私の代で、マーケティングの専門部署を作り、トップのセンスに左右されない商品開発体制を強化し始めました。

 従来は商品開発をして売ったら終わりでしたが、今ではマーケティングを行い、仮説を立て、商品を発売し、狙い通り売れたのかを検証して次に生かすというPDCAのサイクルをしっかり行っています。

 マーケティングを強化したことによって、当社が変わったことの一つは、商品の訴求の仕方により注力するようになったことです。

 良い商品を作ることは大事ですが、良い商品だからといって、必ずしも売れるわけではありません。顧客への訴求の仕方が間違っていたら、売れるものも売れなくなります。

 一方、以前からある商品のパッケージを買えただけで、すごく売れるようになることもあります。

 たとえば、くん煙剤の「アースレッド」は、もともとゴキブリ用、ダニ用などの害虫別で展開していましたが、それに加えて、使うシーン別に台所用、リビング用、子ども部屋用などにしたことで売り上げが増えました。

 また、液体蚊取りの「アースノーマット」は、もともとは蚊を殺すことをうたっていました。しかし、最近は「(虫を)殺す」という言葉に抵抗感を持つ人も増えています。そこで、ノーマットをたいておけば虫が部屋に入ってこないので「(虫が部屋に入るのを)予防する」というパッケージにしたところ、多くの顧客ニーズをつかむことができました。