パナソニックの収益力が低迷する一方、日立製作所やソニーは2019年3月期に過去最高の営業利益をたたき出すなど日系電機大手の明暗が分かれている。なぜパナソニックは凋落してしまったのか。特集「パナソニック老衰危機」(全10回)の#03では、パナソニックと競合を比較しながら、同社の敗因を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
M&Aで先手を取る日立
後手に回るパナソニック
「今のパナソニックには、何一つ強いものがない。このままでは10年持たない。早ければ3年でつぶれると思っている」。あるパナソニック中堅幹部は声を潜めて危機感をあらわにする。
別のパナソニックOBも手厳しい。「もはやパナソニックは日本のお手本企業ではなくなってしまった。取材対象として堪え得る企業体ではない――」。
創業101年の名門企業、パナソニックといえば、業績の良いときでも悪いときでも、国内製造業のベンチマークだったはず。なぜここまで凋落してしまったのだろうか。
2012年に鳴り物入りで登板した津賀一宏社長は、就任するや否や巨額投資の回収が不能になっていたプラズマディスプレイ事業からの撤退を決断。改革の旗手として社内外から脚光を浴びた。
それから7年半。改革のスピードは急激に低下し、津賀体制の7年半は、ライバルの日立製作所やソニーに引き離され、「屈辱」にまみれる期間となった。
敗因は、大きく二つある。津賀社長のリーダーシップの欠如と、危機感を全社で共有できない大企業病のまん延である。
それを説明するのに最適なのが、パナソニックと日立の構造改革の違いだ。両社は共に売上高10兆円規模の会社で、08年のリーマンショック以降、7000億円超の最終赤字を計上した。明暗を分けたのは、巨額赤字を全社的な慢性疾患によるものと捉えて根治しようとしたか否かである。