ベトナム人技能実習生リンチ事件が「第二の徴用工問題」になりかねない不安写真はイメージです Photo:PIXTA

技能実習生の被害は今後も減らない?暗い日本の未来

 岡山市内の建設会社で働いていたベトナム人技能実習生が、職場で2年間にわたって暴行を受けていた事件が大きな波紋を呼んでいる。

 国の外国人技能実習機構がこの会社や監理団体に改善を勧告し事実関係を調査しているが、その一方で義憤にかられた人々による“正義の制裁”も過熱してきている。

 ネットやSNSでは、当該の建設会社を特定するまとめサイトが林立し、「日本の恥」「ゴミ企業」などと攻撃、まったく関係のない建設会社までが誹謗中傷にさらされている。

 ただ、どんなにこの建設会社をボコボコに叩いて「見せしめ」にしたところで、今後も技能実習生がパワハラ、いじめ、過重労働の被害者となるケースは増えていくだろう。

 ご存じのように、そもそもこの制度は、「日本人が嫌がる仕事は外国人にやらせてスカッと解決!」という明治時代から脈々と続く「労力の輸入」という日本の伝統的な人権意識が根っこにある。

 そこに加えて、日本の政治は「最低賃金を上げたら景気が悪くなって日本はおしまいだ!」と主張する中小企業団体に選挙で世話になっているので、この先も当分、技能実習生が送り込まれているような企業の低賃金・重労働は改善されない。実際、厚生労働省が昨年8月に公表した調査によれば、技能実習生が働く8124事業所のうち70.8%で労働基準法や労働安全衛生法違反が見つかっている。

 つまり、今回のような事件は、いつどこで再び起きてもおかしくないということなのだ。

 ただ、そういう目先の話もさることながら、個人的にはこの問題が後世になって日本を不当に貶めるための材料に利用されて、我々の子どもたち、孫たちの世代にとんでもない迷惑をかけてしまうのではないかという懸念の方が強い。