三菱商事の洋上風力圧勝が開けた「バラマキの地域格差」というパンドラの箱Photo:timandtim/gettyimages

世界的に急加速する脱炭素の切り札として期待される洋上風力発電プロジェクトの「第1ラウンド」は衝撃的な結果となった。三菱商事グループが秋田県と千葉県の計3エリアで全勝したのだ。圧倒的な価格競争力を武器にした三菱商事による総取りは競合他社のみならず、地元にも大きな波紋を広げている。漁業振興を巡るバラマキの地域格差というパンドラの箱を開けたのかもしれない。(エネルギー政策提言集団スキイ)

破格値での落札で漁協に衝撃

「もうやけ酒を飲むしかない。こんな値段で三菱商事は地元のことを真剣に考えてくれるのか。漁協は何の説明も受けていない。最後は組合員が決める。反対だってあり得る」

 秋田県のある漁協は、由利本荘市沖や能代市沖の海域で計画されている洋上風力発電所の事業者に三菱商事を中心とするグループが入札上限価格29円/kWhの2分の1から3分の1という破格値で選ばれたことに衝撃を受け、語気を荒げた。

 洋上風力発電は、脱炭素を目指す日本が再生可能エネルギーの主力電源とするため、官民が一体となって新産業に育てようとしてきた「国策」だ。経済産業省の資源エネルギー庁と国土交通省は昨年12月24日、その実質第一弾となった秋田県能代市・三種町・男鹿市沖の48万kw、由利本荘市沖の82万kw、千葉県・銚子沖の39万kwの事業者を決める入札の結果を公表し、三菱商事がライバルを圧倒する破格値で3件全てを落札した(下図参照)。

 洋上風力を新たな収益源にしようと狙っていたゼネコン、エンジニアリング会社、部品メーカー、地元の建設業者はこの落札価格に衝撃を受けた。1兆円規模と期待された商談スケールは、第一弾からいきなり三菱商事の破格値で半減以下になることが確実となり、売電収入から地元漁協に還元される基金(出捐金)も想定を大きく下回ることになるからだ。

 次ページでは、今後の洋上風力プロジェクトにも影響を与えかねない、地元漁協を潤すはずだったカネを巡る地域格差の真相に迫る。