勤め先の会社に黙って、インストラクターのバイトを始めたスポーツマン。しかしバイト先で大けがをしてしまい、入院することに……。この場合、労災は下りるのでしょうか?2020年9月の法改正を踏まえて解説します。(社会保険労務士 木村政美)
体育大学を卒業、地元の企業に勤めても
運動を続けるスポーツマン
地方都市にある製造業の会社で、従業員数は200名。
<登場人物>
A:30歳。都内の体育大学卒業後、スポーツジムを経営する会社に就職。スポーツインストラクターをしていたが実家の事情でUターンし、現在は甲社で商品製造機械のオペレーターをしている。
B:スポーツジムの店長。常連客であるAとは仲が良い。
C:甲社の総務課長。
D:Aの直属の上司で製造課長。
E:甲社の顧問社労士。
学生時代、陸上部の長距離ランナーだったA。社会人になり選手生活は引退したが、現在も趣味で走り続けている。平日は毎日出社前に10キロのランニングを欠かさず、仕事を終えると自宅から歩いて10分のスポーツジムに週3日は通って身体を鍛えた。週末は、5年前に仲間たちと結成したランニングサークルでトレーニングをするか、マラソン大会に参加する。
2年前、サークル内で知り合った年下の女性と交際するようになってからは、「もっと鍛えて彼女にカッコイイところを見せよう」と、大会へのエントリーやジム通いの回数を増やした。しかしその分趣味の費用がかさみ、ついに自分の預金通帳残高が0になったとき「これはヤバイな」と感じた。