長時間のデスクワーク、テレビや動画の視聴、休日の寝だめなど、平衡感覚を低下させる原因はさまざまであるらしい。近年はリモートワークによって、体を動かす機会がさらに減った人もいるだろう。

 マネジメント職にキャリアアップした人も要注意。プレーヤーだった頃と比べると、マネジメント業務はデスクワークが増えがちだ。残業や休日出勤が増えれば、運動のための時間確保がますます難しくなる。

平衡感覚の低下は
仕事の成果にも影響する?

 驚くべきことに平衡感覚の低下は体だけでなく、学業にも影響を及ぼしかねないことが報告されている。

 2007年にドイツのアーレン大学で、平衡感覚に関する研究が行われた。研究者らは、平衡感覚が学校での成績に影響するという可能性を発見した。

「平衡感覚に異常があった被験者グループの平均値のほうが、平衡感覚が正常だった被験者グループの平均値よりも0.6以上低かったという。さらに、成績が高い被験者は平衡感覚の能力が優れていることも明らかに示されている」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より)

 この研究によれば、平衡感覚を鍛えることでバランスを司る身体能力のみならず、認知能力を向上させる可能性があるという。研究の調査対象は5~18歳の若年層3000人以上であるから、ビジネスへの影響は不明だ。しかし平衡感覚が認知能力に影響しているとすれば、仕事における認知能力にも関係しているかもしれない。

 つまり、加齢や運動不足による平衡感覚の低下を放置すると、体にも仕事にも影響し得るというわけである。