各エンドの最後の一投を投げるのは「スキップ」と呼ばれる選手だ。日本女子代表では今回も前回と同じく藤澤五月がスキップを務める。カーリングでは、リード、セカンド、サード、スキップの順に2投ずつ投げる。展開してきた攻防を締めくくるのがスキップだ。

 スキップには当然、大きな重圧に負けないメンタルの強さ、正確無比なコントロールが要求される。他の選手が投げるときは、司令塔のポジションで指示を出すのもスキップの役目。勝敗を左右する大きな存在であるのは言うまでもない。

 だが、もうひとり、スキップの力を引き出す上で重要な存在が「サード」だという。

 サードがスキップのお膳立てをうまくできてこそ、スキップは重圧のかかる局面でスムーズに力が発揮できる。

 今回もそのサードのポジションを担う吉田知那美は言った。

「スキップは私も以前経験したことがあります。スキップがどの選手より勝敗に結び付く一投を投げなければいけないのは事実なので、そういう部分を私だけでなく、リード、セカンド、リザーブもコーチも全員でサポートしていく気持ちがないと最後の一投は決まらないと思っています」

 さらに彼女はこう続ける。

「ゲームの中でよりそばにいて、より近くで一番話をするのは私です。サードとして投げる石もそうなんですけど、いかにスキップの石を決めやすくするかもサードの大事な仕事だというのは、コーチからもずっと言われています」

 カーリングの面白さは、「氷上のチェス」とも形容される戦略と頭脳戦にある。同時に、目に見えない選手たちの心理の動き、重圧への対応もゲームを直接左右する。個々の選手はもちろんだが、チーム全体の空気や勢いが刻々と変わり、劣勢になったり優勢に転じたり。そうした目に見えない流れを感じ取って応援するのもカーリングの楽しみであり深みだ。

 準決勝は2月18日(金)、決勝は閉会式の行われる最終日、2月20日(日)だ。果たして女子日本代表(ロコ・ソラーレ)はこの舞台に立つことができるだろうか。その可能性は大いにある。選手、コーチがそう固く信じている雰囲気が、記者会見の表情からひしひしと伝わってきた。チームは間違いなく手応えを感じて、北京五輪に臨む。

(作家・スポーツライター 小林信也)