写真:中野祥三郎・キッコーマン代表取締役社長COOキッコーマンの中野祥三郎社長は「本当はもう少し値上げしたい」との本音も明かした Photo by Masato Kato

食品大手のキッコーマンが2022年2月から醤油と豆乳を14年ぶりに値上げする。社内議論では、値上げに「反対する者はいなかった」という。キッコーマンはインフレにどう対処するのか。中野祥三郎社長に、値上げを巡る戦略を聞いた。 (ダイヤモンド編集部 山本興陽)

原材料価格や物流費が高騰
今回ばかりは企業努力の範囲超え

――2022年2月から、醤油と豆乳を14年ぶりに値上げします。

 醤油の原材料は大豆と小麦で、豆乳は大豆がメイン。こうした原材料が軒並み値上がりしています。

 加えて、石油や重油の価格も上がったことで、配送関係の物流費も上がりました。原材料は基本的に海外から輸入していますから、その影響は大きい。

 さまざまなものが値上がりし、コロナ禍でのグローバルインフレの波が急激にわれわれにのしかかってきたのです。これまでも原材料価格や物流費が上昇したことはありましたが、そのたびに(値上げを回避するための)社内努力を行ってきました。ですが、今回ばかりは努力できる範囲を超え、値上げを決断したのです。

――21年11月に醤油と豆乳の値上げを発表しました。いつから値上げを検討していたのですか。

 21年の夏ぐらいから、「今回は値上げをせざるを得ないかな……」と社内で議論が始まりました。ただし、値上げはタイミングやどの商品を実施するのかなどといった問題もあり、簡単には決められません。同年10月あたりに内容が固まり、11月の値上げ発表に至りました。

――原材料価格は大豆や小麦に限らず上昇しています。ですが、最初に値上げを発表したのは醤油と豆乳だけ。なぜでしょうか。