日本の自由民主主義を学びたいという中国人留学生が増加?

 人権問題を理論的に考えても、理屈が通じない中国相手では机上の空論にすぎなくなり、話が進まない。それならば、中国人と直接対峙した経験からアプローチするしかない。

 私は、香港民主化運動の女神と呼ばれたアグネス・チョウ(周庭)氏と交流し、学生とのオンライン・ディベートを実行するなど、言論弾圧を受ける彼女にさまざまな方法で自由な発言の場を提供しようとした(第261回)。

 一方で、私は大学で、多数の中国からきた学部生、大学院生を指導している。不思議なことだが、香港の民主化運動に関わり始めた後に、私の指導を受けたいという中国からの学生が増え続けている。

 彼らに話を聞けば、私が執筆した論文や記事が中国でよく読まれているらしいことがわかる。当然、香港の民主化運動に関するものや、中国共産党批判が含まれている。だが、だからこそ彼らは、私から学びたいのだという。

 私が教えるのは、日本の自由民主主義だ。私にとって、学生の「国籍」「民族」「宗教」「思想信条」などはまったく関係がない。学生は学生であり、「個人」だ。

 そして、私は「中道主義」だ。特定の政治的立場には立たず、すべてを批判的に検証する。いいことはいいと評価する。悪いことは悪いと批判し、改善を求める。それは、英国の大学で学んだ最も重要なことである。だから、中国など権威主義体制の問題でも、誰に遠慮も忖度もせず批判してきた(第263回)。

 中国から来た学生から、クレームのようなものを受けたことはない。彼らは、よく学び、疑問を持ち、ストレートに質問をぶつけてくるだけだ。