中国の若者にストレートに批判をぶつけない

 私は、中国から来た学生に対して、次のように話してきた。

 まず、新疆ウイグル、香港、南モンゴルなどの人権侵害について、ストレートに批判をぶつけず、論評はしないといったん断っておく。その上で、世界に公開されている情報を見なさいという。

 例えば、香港などで中国共産党に批判的なメディアの報道の自由が奪われている。民主化運動に関わる人たちが逮捕されている。言論の自由、思想信条の自由が失われている。重要なことは、中国共産党はこの事実を隠していないことだ。

 香港国家安全維持法の施行は、世界中に対して堂々と隠すことなく行われた。中国共産党は、弾圧を「中国社会を不安定化させるテロリストとの戦い」だとして正当化している。欧米の批判に対して一歩も引くことがない(第250回)。

 また、新疆、南モンゴルなどでは、民族独自の言語、文化、歴史の教育を段階的に廃止し、中国語、中国文化の教育を進める、漢民族との同化政策が行われている。中国共産党は、これも隠しているわけではない。

 中国国内の多様な民族が、急成長する中国社会に参加できるようになれば、経済発展に貢献できる。豊かな生活が送れるようになるなどと主張し、正当化しているのだ。

 中国から来た学生も、おおむねこのような考え方をしている。そう教えられてきたからだ。それを全否定しても、なかなか彼らの頭には素直に入らない。誰でも母国を否定されれば、かたくなになってしまうものだ。人間は感情の生き物なのである。知性と教養で感情を抑えようとしても難しいものだ。

 そこで、私は日本の経験から話をする。