ECB「利上げ失敗」の歴史、拙速な政策転換は欧州経済ハードランディングを招くPhoto:PIXTA

ユーロ圏の1月の消費者物価上昇率は市場予想を上回ったことで、注目された2月3日のECB(欧州中央銀行)の政策理事会。ラガルド総裁は22年内の利上げを否定しなかった。過去の原油高局面でのECBの利上げはその後の経済にマイナスに作用した。今回も米英のように労働市場の逼迫が起きていない状況で利上げを急げば、欧州・世界経済に悪影響を及ぼしかねない。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)

ラガルドECB総裁は
22年内利上げを否定せず

 2月2日に公表された1月のユーロ圏のCPI(消費者物価指数)の上昇率が市場予想を上回る前年同月比5.1%となるなか、市場参加者が注目した2月3日のECB(欧州中央銀行)政策理事会では政策、そしてフォワードガイダンスに係る変更はなかった。

 しかし、ラガルドECB総裁が「金融政策運営において柔軟性とオプショナリティー(選択の柔軟性)を維持することがこれまで以上に必要だ」としたことから、「今後の物価次第で何らかの政策修正はあり得る」との思惑が高まり、ドイツ10年国債利回りが前日比10bp(ベーシスポイント)以上上昇し、0.15%に迫った。

 同じ3日に2度目の利上げを決定した英国のBOE(イングランド銀行)や3月に利上げを行うと目されるFRB(米連邦準備制度理事会)に対して、インフレの評価や金融引き締めに係るスタンスを異にしていたECBまでもが「止まらないインフレ」を前に動揺し始めた格好だ。

 ラガルド総裁は22年には物価が下がってくるとの見通しを示しながらも、これまで否定し続けてきた「22年内利上げ開始」については否定しなかった。