甘利明氏の功績とは?
大企業に「天下り」が続々

 安倍政権時代、甘利氏はアメリカのNEC(国家経済会議)にならって、経済安保政策を立案する組織を立ち上げるように首相に提言した。それを受けて、北村滋氏が2代目局長を務めていた国家安全保障局の中に、新たに「経済班」が設置され、藤井氏がその初代班長に就いたという流れだ。

 甘利氏といえば、経産相、経済再生担当相を歴任した「商工族のドン」として知られており、経産省にとっては守り神的な存在である。かたや経済班設立に尽力した北村氏は、警察庁で外事畑を歩み、内閣情報調査室のトップを7年以上も務めたことから海外からは「日本のCIA長官」の異名をとるインテリジェンスのプロ。また、安倍元首相からの信頼も厚く、非常に近い間柄だったことでも知られている。

 つまり、「経済安全保障」という国策は、安倍・甘利ラインという政治力学の中で産声をあげて、そこにひもづいている経産省と警察庁の官僚たちの手によって、徐々に形づくられていったというわけなのだ。

 そんな「経産省+警察」構図を如実に示しているのが、「天下り」である。

 昨今の経済安保の重要性が唱えられる世相を受けて、三菱電機、富士通、デンソー、NECなどの大企業に経済安全保障の専門部署が新設されているのだが、その担当役員として迎えられているのが、日下部聡・前資源エネルギー庁長官をはじめとした経産省OBなのだ。

「経済安保バブル」に躍るのは、警察も同じだ。

 警察庁では昨年1月、「経済安全保障対策官」を新設。都道府県警と連携しながら、民間企業や大学向けの対策説明会や意見交換といった「経済安全保障コンサルティング」に取り組む方針だという。実際、警視庁では昨年3月、公安部に経済安全保障のプロジェクトチーム(PT)を発足。9月から半導体などの最先端技術を取り扱う製造系の大企業を訪問して、企業を狙ったスパイの具体的な手口などについての情報を提供している。

 パッと見、「日本企業の技術を守るために、おまわりさんたちも頑張ってくれている」という美しい話なのだが、全国の警察官の再就職先確保のため、民間企業に「経済安保コンサルタント」を売り込んでいるようにも見える。