ヴァイオリニストでテレビ朝日系『羽鳥慎一 モーニングショー』のコメンテーターとして活躍中の『私がハーバードで学んだ世界最高の「考える力」』著者・廣津留すみれさん。大分県で生まれ育ち、小・中・高と地元の公立校、塾通いも海外留学経験もないまま現役合格したハーバードをなんと首席で卒業。その後、進学したジュリアード音楽院も首席で卒業した。すみれさんが学び、実践してきた「考える力」を事例やエピソードとともに、わかりやすく紹介します。
「論理的思考」と「批判的思考」で
決めつけや思い込みから
自分を解き放とう
数字に苦手意識を持っている人は多いと思います。でも、「数字に弱い」という人の多くは、本当は数字が苦手なのではなく、ロジカル・シンキング(論理的思考)が苦手なのではないでしょうか。
ロジカル・シンキングとは、物事を論理的にわかりやすく考えて問題解決を目指す思考法のこと。土台となるのは、論理のベースとなる「事実の把握」です。
ロジカル・シンキングをする機会が少ないと、数字を読み解く力は伸びません。それが「数字に弱い」という思い込みにつながっているのではないでしょうか。
問題を1つ1つ丁寧に掘り下げるロジカル・シンキングを習慣にすると、数字への耐性が高まり、いつの間にか数字に強くなっていくと思います。
そもそも日常生活でもビジネスでも、数字がついてまわります。たとえば、同じ50%でも、「50%しかない」と捉えるのか、それとも「50%もある」と捉えるのか。データの出し手や背景にまでさかのぼって、ロジカルに考えてみるべきです。そうでなければ、数字の持っている意味を取り違える恐れがあるからです。
事実だと思い込んでいた数字やデータに、あとから誤りが見つかることもありますから、事実かどうかのファクトチェックも不可欠です。情報源が信頼できるソースなのかをあらためて確認して、複数の情報源をクロスチェックしながら事実を検証します。
とくにインターネットでは「子引き」「孫引き」が当たり前で、出典が示されていないケースも多いです。情報は玉石混交ですから、参照する際には丁寧な検証が求められます。
ロジカル・シンキングに加えて必要なのが、クリティカル・シンキング(批判的思考)です。
論理的で客観的に考えているつもりでも、そこには気づかないうちに多くのバイアス、つまり“偏った見方”が紛れ込んでいることがあります。こうしたバイアスの存在を疑って、批判的に検証しながら考えを深めていくのが、クリティカル・シンキングです。
無意識に「自分が正しい」と思い込んでいると、正しい結論にたどり着けないことがあります。誰でも「自分は正しい」とか「自分が正しくありたい」と思いたいものですが、独善的な思考は考えの幅を狭めて、結局は自分の首を絞めてしまいます。
できるだけ俯瞰して自分を客観視することが大事です。時にはまわりの人に意見を求めながら、独善的になっていないかを検証してみることも効果的です。
クリティカル・シンキングを養うのに読書が有効とされますが、それは著者の視点で自分の考えを検証しながら読み進められるからです。
私は読書に熱心なタイプではありませんが、その代わりに困ったときに入る「第三者スイッチ」があります。まるで赤の他人の第三者が私を見ているように、自らを客観視するのです。
皆さんも考えに行き詰まったときは、第三者的視点に立ってみてください。
「これが正しい!」と思い込んでいたのに、「あれ、ひょっとしたら違う考え方があるかもしれない」という気づきにつながり、柔軟な思考ができるようになります。そのためには、意地をはったり、データの解釈を変えて自分の意見を通したりすることなく、素直になるのがいちばんです。
ロジカル・シンキングとクリティカル・シンキングの習慣がうまく噛み合うと、問題解決能力もワンランクアップするはずです。
無意識に自分が正しいと思い込んでいませんか?