飲食店の時短営業は本当に
感染拡大防止に効果があるのか?

 本稿執筆時点では、まん延防止等重点措置が出される地域が増え、それに伴い飲食店も時短営業を余儀なくされる事態に追い込まれました。

 仕事帰りに居酒屋で一杯飲むのが当たり前だった人からすると、友人や同僚と飲めないことは、明日への活力を取り戻したり、息抜きしたりする機会が奪われてしまうことになります。落胆の声は、お店だけでなく、そのような利用者側からも上がりました。

 果たして、飲食店の時短営業はどれほどの効果があるのでしょうか? もっといえば、人流抑制は感染拡大防止の観点でどれほどの効果があるのでしょうか? もちろん、この問いに対する絶対的な正解を私が証明することはできません。

 しかしながら、情報活用力に関して、注意すべき点があります。それは「相関関係」と「因果関係」の違いです。

「相関関係」とは、2つの事柄に何らかの関係性があることをいいます。「Aが増えたとき、Bも増えている」関係性が挙げられます。「因果関係」とは、「片方が原因となって、もう片方が結果となる関係性」のことです。「Aが増えたから(原因)、Bが増える(結果)」の関係性のことです。両者は似ていますが、異なるものです。

 コロナ禍の話で考えた場合、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置(いずれも広義の人流抑制策)を施行した後に、新規感染者数が減ったとしましょう。

 これは、相関関係でしょうか(各種政策を施行した時期とピークアウトして感染者数が減った時期が偶然重なっただけ?)、それとも因果関係でしょうか(各種政策を施行したことが原因で、感染者数が減る結果を得た?)。

 政府はこの関係性を分析し、完全に答えを出せなくても、対策の効果に関して国民に説明する必要があると思いますが、現時点では十分に説明がなされていません。

ノイズに振り回されてはいけない!
ビジネスでもクリティカルマインドの活用を

 コロナ関連だけではなく、日常生活でも同様に「情報を見誤ってしまいそうになる」例があります。

 例えば、「スマホの視聴時間が長い子どもは、スマホを使わない子どもに比べて成績が低い」というデータがあったとしましょう。なんだか、イメージでは正しそうに見える情報です。

 果たして、この情報は「スマホを見る時間が長いから成績が低くなる」のでしょうか(因果関係)、それとも「成績の低い子どもが、偶然スマホを見る時間も長かった」だけなのでしょうか(相関関係)。

 実際は、複数の項目や事例と比較しながら、もう少し情報を集めないと判断がつきません。また、調査対象者に偏りがあり、実は「スマホを使っていない子どもでも、成績が低い人が多い」あるいは「スマホを見る時間が長い子どもでも、成績が上がっている」という別のデータが出てくると、当初の情報は根底から覆されてしまいます。

 また、似たような事例で、タピオカがブームになったら不況に突入するというデータもあります。

 1990年代前半の第1次タピオカブームの際は、バブル崩壊で経済はどん底に陥りました。2008年の第2次タピオカブームの際は、リーマンショックでやはり世界経済は不況に陥り、19年の第3次タピオカブームでは、コロナショックで株価が大暴落しました。

 一見するとデータによる事実情報なので、単なる偶然であってもどこか因果関係があるかのように見えてしまい、ゆがんだ解釈をするリスクが生じてしまいます。タピオカブームの事例は都市伝説的な極端な事例ですが、私たちの仕事でも同様です。一見すると正しそうな情報でも、「実態はどうなのか?」「それって本当なのだろうか」と「クリティカルマインド」を持ち、常に冷静な目を持って情報に向き合う必要があります。

 コロナ関連の情報に限らず、仕事においてもクリティカルマインドを持つことで、余計な情報(ノイズ)に振り回されない「情報活用力」を養っておきたいものです。

◎鈴木進介(すずき・しんすけ)
コンサルタント
1974年生まれ。株式会社コンパス代表取締役。現在は「思考の整理術」を使った独自の手法で人材育成トレーナーおよびコンサルタントとして活動中。大学卒業後、IT系企業や商社を経て25歳で起業。著書に『ノイズに振り回されない情報活用力』(明日香出版社、2022年)、『1分で仕事を片づける技術』(あさ出版、2017年)などがある。
HP:http://www.suzukishinsuke.com/