「中高年でも、家電が好きな人か、もしくは購入の予定がある人でなければ、なかなか家電メーカーのサイトにアクセスしませんよね。さらにZ世代は、企業にとっては、中高年にも増して接点がない人たちです。しかし、TikTokという偶然の出会いが起こる場を活用することで、1本の動画から若年層とつながるきっかけが生まれるかもしれないとの期待があるのです」

 また、TikTokのレコメンド機能も、各ユーザーが興味をそそられるような絶妙な距離感の動画を薦めるため、企業にとっては効果的なツールとなる。なぜ、このようなことが可能なのか。

「レコメンド機能の優秀さは、TikTokの運営元であるByteDance社が積み上げてきたノウハウが支えているのだと思います。同社では元々ニュースアプリを提供しており、多くのユーザーの興味の傾向に関するビッグデータがそろっていました。情報を分析するAIがとても優れていて、その技術がTikTokにも応用されているのでしょう」

 TikTokを見る側の使いやすさだけでなく、投稿する側も高度なテクノロジーの恩恵を受けている。アプリ一つで撮影し、編集できる簡便さを実現したのも、同社が培ってきた技術があるからだといえよう。

 最後に、鈴木氏に今年「TikTok売れ」しそうなトレンドを予想してもらった。

「アプリの性質上、懐かしい商品のリバイバルヒットは続くと思います。昨年の爆発的なヒットを受け、意識的に仕掛けてくる企業も出てくるのではないでしょうか。さらに、ライブ配信でリアルタイムに商品を紹介しながら販売する『ライブコマース』の実装も期待しています。まだ日本での開始は未定ですが、英国でテストを行っているのです。コロナ禍で人々がオンラインショッピングに慣れましたし、コミュニケーションが盛んなTikTokはライブコマースとの相性が良さそうですよね」

 利用者が増え、データが増えていけば、レコメンド機能もより磨かれていくはずだ。2022年は、これまで以上に予想もしていなかったものとの出会いをTikTokが運んでくれるかもしれない。