「もちろん、短い動画のなかで何を伝えるか、内容はかなり重要です。内容が良くなければコメントや“いいね”も増えず、他のユーザーにまで拡散されません。反対に、コメントしやすい動画は、販売元がターゲットとして意識していない層にまで届く可能性を秘めています」

 ユーザーのリアクションをうまく味方につけられると、“バズる”動画になりやすい。実は、88年に発売された大塚製薬の「ファイブミニ」や、89年に発売された筒井康隆氏の小説『残像に口紅を』(中央公論新社)が、令和にTikTokきっかけでヒットしたのは、視聴者のコメントが増えやすいコンテンツであったことも関係しているという。

「数十年前からある商品は、これまでに手に取った経験がある人が多い商品です。知っている人はコメントを残しやすく、それが呼び水となってコメントが増え、レコメンド機能で拡散されていきます。コメント欄に投稿された商品に対する質問へ、動画投稿者ではなく、すでにその商品を知っている一般の利用者が返事をするケースも珍しくありません。TikTok売れしている商品にリバイバルヒットが多いのは、こうした理由も絡んでいると思います」

運営元の高いAI技術が
支えるレコメンド機能

 また、TikTokが消費者への“認知”に効果的である点を活用し、将来的なTikTok売れを狙った発信をしている企業も増加中だ。

「車や白物家電メーカー、結婚式場、不動産といった企業の公式アカウントが増えています。今挙げた製品は、購入するのも利用するのもTikTokのメインユーザーより上の世代ですが、ターゲットとしているのはあくまでもZ世代(1990年代中盤以降に生まれた世代)。将来いざ購入するときに、『あの会社の商品にしよう』と思い出してもらうための認知獲得が目的なのです」

 こうした戦略がかなうのも、思いがけない出会いを提供できる機能があってこそだろう。