日中の交流、善意がもたらしたその“結果”

 中国での日本品種の栽培は、私たちの想像を絶する規模で行われていた。

 日本の農林水産・食品産業技術振興協会によれば、シャインマスカットは中国における総栽培面積の10%に相当する5万3000ヘクタールで栽培。また「紅ほっぺ」については、総栽培面積の25%に相当する4万4000ヘクタールで栽培されているという。

 気がつけば中国は、世界最大のイチゴ生産国である。

 北京知研諮詢など中国の複数の調査会社が報じるところによると、2020年、中国のイチゴの栽培面積は131億ヘクタール、生産量は345万トン。世界の生産量に対し、すでに4割近いシェアを占める。中国は輸出も手掛けており、2014年に1291トンだった輸出量は2020年には5815トンとわずか6年で4.5倍になったという。ちなみに、最大の輸出先は日本(輸出量の20%)であり、主に冷凍食品やジャムとして中国産のイチゴが流通している。

中国に食われる日本の食品ブランド、「農産物」輸出1兆円超でも喜べない理由日本品種を栽培する中国が対外輸出を強化すれば、日本の食品ブランドは太刀打ちできない。(写真は日本で販売されている紅ほっぺ)

 このような発展を遂げた背景には、日中の技術交流があった。中国のイチゴの三大生産地は遼寧省、山東省、江蘇省なのだが、その中でも中国で最大の産地といわれる遼寧省には東港市草苺研究所があり、積極的な日本品種へのアプローチを見せている。

 同研究所のホームページを見ると、毎年日本から専門家が招かれていることが分かる。2017年2月に日本からイチゴ栽培の専門家4人を招待し、また同年12月には東港市副市長を団長として、科学技術の専門家や栽培農家など10人から成る視察団が栃木県、茨城県、東京都などを訪れ、研究機関や生産農家、専門家などと積極的に交流した。同研究所が扱う日本品種には「紅ほっぺ」や「章姫(あきひめ)」「とよのか」「とちおとめ」など実に17品種あり、それらを中国に普及させている。

 スイカもまた同様で、千葉県の篤農家が80年代に北京の農業研究所で技術指導を行い、新種の「京欣一号」を開発した。毎年夏には北京で大量に出回る人気銘柄だという。

 イチゴのみならず、中国の主要な果物の品種と栽培技術は日本から“導入”されている可能性が高い。