キリンホールディングスが、ビール会社から医薬品・健康関連企業へ大転換を図っている。旧協和発酵(現、協和キリン)が急成長し、一時は協和キリンの時価総額が親会社のキリンHDを上回った。健康関連分野では「プラズマ乳酸菌」を用いたサプリなどを強化し、「免疫の維持」という強い消費者ニーズのあるマーケットでも存在感を高めている。一方、国内ビール事業は今後、リストラの可能性も否定できない。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
医薬品や健康関連産業の企業へ
業態変更を急ぐキリン
わが国経済の成長率低下に伴い、有力企業も業態変更に取り組まざるを得ない状況にある。その中で、キリンホールディングスは、ビールや飲料のメーカーから、医薬品や健康関連産業の企業へ業態変更を急いでいる。
キリンは、「ラガービール」によって高収益を上げ、1990年代半ばまで国内最大手のビールメーカーとして成長した。しかし、辛口なテイストと鮮烈な喉越しを実現したアサヒビールの「スーパードライ」の登場によって、トップの座を奪われた。
その後、キリンは国内ビール市場のシェア奪還に取り組んだ。加えて海外市場への展開も強化した。中国、ブラジル、ミャンマーなどの新興国のほか、米豪でもビールや飲料メーカーの買収や地元企業との合弁事業が行われた。
しかし、競争の激化、消費者の味覚の違い、ミャンマーでのクーデター発生などによって、ビールと飲料事業のグローバル展開で成長する経営は限界を迎えている。業態シフトを目指してキリンは、旧協和発酵(現、協和キリン)のノウハウを生かした医薬・健康関連事業を強化している。
問題は、世界全体で当該分野の競争が激化していることだ。ビールと医薬品ではビジネスモデルも異なる。新たな分野でキリンが十分な競争力を発揮することができるのか、経営陣の本気度が問われる。