米国がロシアをけしかけて
ウクライナ侵攻が起きたかに見える理由

 今回のロシアのウクライナ侵攻をどう見るかは、立場によっていろいろだろう。

 他の主権国家に軍隊を侵入させて戦闘を起こし、民間人にまで被害が出るようなことをするロシアが非難されるのは当然だ。この種の超国際法的に野蛮な行為が許されるのは、ここ数十年は米国だけだった。しかし、それは米国の軍事・経済が圧倒的に強くて誰も文句が言えなかったからだ。ベトナムもイラクもアフガンも、実に非人道的でひどかった。

 今回、米国は早々に軍事的には不介入の姿勢を見せ、ならばとばかりにロシアが「わが国は最強の核保有国の一つだ」とまで言って、傍若無人に振る舞っている。それではロシアが得をしているのかというと、そう単純でもない。

 以下は、あくまでも筆者個人の一つの見方であり、これを日本の見解とすべきだなどとは思っていないが、筆者には、今回の紛争は米国がけしかけたように見える。

 そもそも、米国陣営はウクライナの反ロシア的政権である(米国の傀儡〈かいらい〉だとまでは言わないが)ゼレンスキー政権に肩入れしてきた。そして、北大西洋条約機構(NATO)加盟をちらつかせて、NATOとの合同軍事演習にまでウクライナを参加させてロシアを挑発してきた。ロシアとしては、隣国で規模が大きいウクライナがNATOに加盟する事態は許しがたかっただろう。

 また、緊張が高まった状態になると、ロシアが侵攻するという諜報情報を大いに流して、自らは軍事的に不介入だとサインを送った。そのことで、それでも手を引いていると弱腰のぐずに見えるように、ロシアのウラジミール・プーチン大統領を追い込んだかに見える。

 その結果どうなったかと言うと、欧米の制裁によってロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム2」が当面稼働せず、さらに石油・天然ガス(LNG)開発プロジェクト「サハリン2」なども制裁の対象に加わるかもしれない状況となった。ロシアが外国にエネルギーを売ることが難しくなって、原油価格・LNG価格などは高騰している。