今や世界最大の産油国である米国は、インフレで庶民は困っているものの、エネルギー産業は大もうけのはずだ。また、金融制裁の得失は見えにくいが、制裁の内容・強弱・タイミングなどにアクセスできる金融業者にとっても、収益のチャンスが発生している可能性は小さくない。

今後は日本も
武器輸出の「お得意様」に?

 加えて、欧州からの武器支援を通じて武器も売れる。武器に関しては、今後中国の動きに神経をとがらせる日本が、さらにいいお得意様となるだろう。

 それにしても、「軍事介入はしないけれども武器の支援はする」という西側陣営諸国の倫理観はいささか不思議だ。ウクライナ人にもっと戦えと言いたいのだろうか。

 いわゆる軍産複合体と呼ばれるような米国のエスタブリッシュメントの利益集団にとって、今回のウクライナ紛争には都合のいいことが多い。米国のジョー・バイデン大統領は、こうした流れの首謀者というよりは、たまたま大統領だっただけの人なのだろう。ただ、支持率が低下している彼にとっても、ロシアという国民の敵が現れて、これを非難していれば勇ましく見える展開は悪くないだろう(彼に他の何かができるようには見えないが)。

 一番かわいそうなのは、ロシア挑発の先頭に立たされて、戦闘が始まると手を引かれてしまっているウクライナ人だ。ロシアの制裁に付き合わされて今後高いエネルギーを買うことになるだろうドイツや日本も割を食っている。

 プーチン氏にとって今回の侵攻が得だったかどうかは、ウクライナとの「落としどころ」がどの程度の成果になるのかと、経済を含めてロシア国内の運営がうまくいくか否かに掛かっているだろう。そううまくやっているようには見えないが、どうなのだろうか。