株式市場ではプーチン大統領より
FRBのパウエル議長が怖い

 もちろん、戦争は先が読めないので、今後不測の大事態が起こらないとは限らないが、ウクライナ紛争は米国の「経済」にとって、相当程度「遠くの戦争」が当てはまる事態だ。

 エネルギー価格が高騰すると、庶民にとってはガソリン価格の値上げなどによるインフレが問題だが、日本と異なり米国では賃金もそこそこに上昇している。

 米国のインフレは、需給両面の要因によるものだろう。資源価格の高騰や新型コロナウイルスをきっかけとした人手不足による賃金上昇、サプライチェーンの乱れなどの供給側の要因と、コロナ対策としての金融緩和と財政支出の効き過ぎによる需要側の要因の二つだ。その中で、投資家にとって心配なのは、ジェローム・パウエル議長が率いる米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ対策に張り切り過ぎることだ。

 率直に言って、筆者はプーチン氏の狂気も怖いが、パウエル議長が真面目に力み過ぎることの方がもっと怖い。

 FRBによる利上げとバランススシート縮小が取り沙汰されるプロセスの中で、ある程度の株価の調整は織り込み済みだろう。だとしても、金融政策が物価に波及するまでにはタイムラグがあるので、「やり過ぎ」で株価等の暴落が起こる可能性が少々ある。

 投資家としては当面、気持ちの悪い思いをしながらも株式投資のポジションを維持して我慢しつつ、暴落があったら、そこはチャンスだと見て買うことを楽しみとする、というくらいの心構えがいいだろう。

「戦争なのに、言うことが気楽すぎる」。確かに筆者もそう思うが、投資家にできることはこの程度のことであり、この方がパニックに陥って売ったり買ったりするよりも世間に迷惑をかけない。

 それに、「パウエルリスク」に加えて、日本の投資家はもろもろの「岸田リスク」(「新しい資本主義」の迷走その他)についても心配しなければならない。