国内では、日本は平和原理主義国家だという声も聞かれるが、北朝鮮の脅威に備え長年徴兵制を導入している韓国のような国家も世界には少なくなく、国(人)によって平和観や安全保障観が異なることを十分に理解する必要がある。海外でビジネスを展開していく際には、日本の平和観や安全保障観で世界や現地を見るのではなく、客観的な視野が極めて重要となる。

 もう一つは、今回のロシアによる侵攻を巡る国際関係だ。これまでのところ、日本のメディアでは、欧米や国際社会によるロシアへ制裁、反戦デモの拡大などプーチン大統領やロシアの孤立を強調する報道をしているが、最近開催された安保理会合におけるロシア非難決議案では、中国とインド、アラブ首長国連邦(UAE)が棄権に回った。

 米中対立に象徴されるように、バイデン政権が唯一の競争相手と位置づける中国が、対米国でロシアとの戦略的共闘を重視しているので、中国の棄権は十分に想像がつく。

 また、インドやUAEなどもロシアと独自の軍事、経済的関係を有しており、要は、ロシアによるウクライナ侵攻によって世界でロシア批判が高まっても、その批判の強度も国によって強弱、温度差があり、全ての国が欧米先進国並みにロシアへの非難を強めるわけではない。

 たとえば、中国が一帯一路によって途上国へ経済的支援を強化すれば、中国を非難する決議案が国連で議論された場合、中国との経済関係から同決議案において棄権する途上国が増えてきても、不思議ではないだろう。

 要は、国際政治の権力構造は変化してきており、もはや欧米先進国が主軸という世界ではなくなってきている。海外でビジネスを展開していくにあたっては、流動的に変化する国際関係からリスクやチャンスの前兆を見極め、戦略的に動いていくことが重要となる。

(オオコシセキュリティコンサルタンツ アドバイザー/清和大学講師〈非常勤〉 和田大樹)