「要らない」「使えない」は通用しない
問答無用の社員全員スマホ時代
明日から、ケータイではなく、これを使ってください。
さわやか信用金庫(東京都港区)の56店舗450人の営業マンの元に、渉外支援端末としてスマートフォンが届いたのは2012年4月のことだった。
「午後に端末を渡され、明日からだ、と。取扱説明書もなく、随分荒っぽいやり方でした」と、広尾白金支店の望月紀一営業第二課課長は苦笑しながら振り返る。
それまで同信金の営業マンが持ち歩いていたケータイは、カシオ計算機製の・Gショック・ケータイ。耐衝撃性のある防水仕様で、外回りでは重宝していた。出先ですべての顧客情報の照会が可能で、集金や預かりなどの取引データを入力すれば随時サーバに格納されるという、全国の信金の中でも先進的なシステムだった。
08年にケータイが導入される前は、多くの信金と同様、専用のハンディターミナルを使用していた。今でも全国270の信金のうち200以上はこの端末を使っているが、何しろ大きく、重く、雨にも弱い。故障も多く、1台30万円するのに、月に1台は壊れていた。それに対しケータイは、4年間で故障はゼロだった。
また、幸いさわやか信金では例はなかったものの、全国ではたびたびハンディターミナルの紛失・盗難の事故が起こっていた。それは即、顧客情報の流出を意味する。その点、採用したケータイは、遠隔操作で中のデータを消せるという機能を装備していた。これならセキュリティ上の心配もない。
その意味で、ハンディターミナルがケータイに替わったのは画期的だったのだが、導入から4年がたち、新たな課題も出始めていた。
「画面が小さくて年配者には見にくいのと、画面を見ながらテンキー(数字ボタン)を操作して文字入力するというのは、決して使い勝手がよいとはいえない。また通信速度も端末の処理スピードも遅かった」と、さわやか信金の大井博史システム課調査役は説明する。