自動車の運転においても、引退などしてはいけません。最近は、高齢者の運転に対して、危険であるかのような風潮が広がっていて、免許の自主返納などといったことまで始まっています。

 しかし、高齢になっても運転をやめたりしないことが、元気な高齢者でいるためには大切なことです。

 交通の便がいい都会に住んでいる人なら、自動車の運転をやめたとしても、他の移動手段があると思います。

 しかし、地方にいて、外出の際には常に車を運転していたような人が運転免許を返してしまうと、ほとんど外に出ることができなくなってしまい、2~3年で要介護状態になったり、認知症のような状態になったりする可能性が高まります。

運転できず外出機会が減ると
運動機能も認知機能も簡単に衰える

 車が運転できれば、ちょっとしたことでも外出する機会は確実に増えます。最近では地方にもショッピングモールや大型スーパーが進出していますので、買い物に車で行っても施設内をかなり歩くので、いい運動になります。

 そういったお店には近隣住民が集まりますので、知り合いに出会って話し込むこともあるでしょう。フードコートに行けば、いろいろなメニューが用意されていて、バリエーション豊かな食事ができます。

 それが運転免許を返してしまって、家にこもり、誰とも会わず過ごすような生活になってしまうと、運動機能も脳機能も簡単に衰えてしまいます。

 筑波大学などの研究チームが2019年に公表した調査結果でも、そのことは裏づけられています。

 この研究チームは、愛知県の65歳以上の男女2800人を追跡調査しました。2006~2007年時点で要介護認定を受けておらず、運転をしている人に10年8月の時点で運転を続けているかあらためて聞き、認知機能を含めた健康状態を調べ、さらに16年11月まで追跡して、運転継続と要介護認定との関係を分析したのです。

 病気になったり、認知機能が落ちたりして運転ができなくなった例は除いて、統計学的に調整して分析をしました。