さらに数日後、新たな情報がSNSで拡散された。

「8人の子どもの父親は1人ではない、その家の父と兄弟も含む」
「歯は、性的暴行を受ける時に反抗して相手にかみつくため、ペンチで無理やり抜かれた」
「舌の先は、真実を語らないためハサミで切った」
「精神的な疾患は長年暴力や虐待された結果だったかもしれない」

 などなど。

 このショッキングなニュースを受け、中国国内では悲しみと怒りの声が爆発した。

「泣いた……。まるで地獄のようだ」
「これは本当に21世紀の世界第2の経済大国ですか? 中世の話のようだ」
「もし、自分の姉妹、娘が、このようになったらどうなるか。考えるだけでぞっとする」
「『人販子』(誘拐者)は死刑だ! 政府が事件の究明を!」

 一方で、世論が高まる中でも、官製のメディアは沈黙を保ち続けた。影響力のある著名人もほぼ口を閉ざしていた。しかしそんな中、一般の民間人が自発的に調査に乗り出した。事件が起こった地域出身の人や、元記者などが自ら実態を調べ、事実を公表したのだ。

削除されても湧き出る「批判の声」
地元政府が調査に乗り出したが…

 このように事実をインターネット上で公表しようとする動きに対して、アカウントが閉鎖されたり、コメントが削除されたりすることも度々あった。ただ、検閲側から削除されても、記事や動画は次々と出てくる。まさに、いたちごっこ状態だった。

 事実を明らかにしようとする記事や投稿に対しては、「真相が明らかになるまで戦い続ける」といったコメントが多く寄せられた。中には、かつて自分も拉致、誘拐される瀬戸際だったという体験をSNSで告白する女性や、身近に「鎖の女性」と同じ境遇の人がいたと話す人もいた。

 中国最大のSNSウィチャット(Wechat)でも、「鎖の女性」事件は大きな話題となった。ウィチャットでは同僚や友人などさまざまなグループが作られる。筆者も多数のグループに入っているが、これまで話題といえばグルメや旅行、ファッションなどのことばかりで政治の話とは無縁だった。しかし、「鎖の女性」に関しては多くのグループで話題となっていた。