「今時の若者は甘えている」と嘆く前に上司がするべきたった1つのことPhoto:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。

体育会系の「しごき」が
当たり前だった80年代の研修

 1985年3~6月に放映された人気ドラマ『ふぞろいの林檎たち2』第1話冒頭シーンが、今でも印象に残っている。

 霧に包まれた山道を、白い衣服の若者が走っている。続くシーンで、それが企業の新人研修の一環であることが明らかになる。主要登場人物である、時任三郎演じる岩田健一と、柳沢慎吾が演じる西寺実が、大学を卒業して就職した会社で厳しい研修を受けているのだ。

 当時は当たり前のように行われた、体育会系の「しごき」のような新人研修。険しい山道のランニングのほか、街角で大声を出しあいさつや自己紹介をするなど、肉体的にも精神的にも徹底的に痛めつけることで社会の厳しさを実感させ、耐性を養うものだった。へこたれたり、弱音を吐いたり、少しでもやる気のないそぶりを見せれば怒鳴りつけられる。場合によってはビンタを食らうなど、体罰に及ぶことも許された。

 一部ではまだ行われているのかもしれないが、今ならパワハラで訴えられるかもしれない。少なくともブラック認定され、たとえ大手企業でも、初任給が高くても、すぐに辞めてしまうだろう。

 それでなくても、「今時の若者は」といういつの時代も変わらぬ定番フレーズに続く「こらえ性がなく、たった数カ月でプイと辞めてしまう」という嘆きが、中高年の会社員の間でよく聞かれる。