連覇のかかるシーズンで5位
小宮山監督が再び部員を叱りつける
春季リーグ戦は前年秋季と同じ2試合のポイント制の延長なし。依然としてコロナ対策の中で行われた。
緒戦の東大戦で6‐5と白星スタートしたものの、2回戦は0‐0。12残塁の拙攻だった。東大との引き分けは10年ぶりのこと。だが、小宮山はむしろチャンスと捉えた。
「なんとかなるだろうという慢心が早いうちに砕かれたはず。練習の雰囲気が変わるかと期待した」
しかし続く立教に連敗。法政には1勝1敗、そして明治にも連敗してしまう。
早慶戦の1回戦は2‐3。惜敗だが、指揮官から見るとふがいない試合だった。
試合後、とうとう小宮山は部員を叱りつけた。
「早慶戦はそのシーズンの集大成。それまでの緩みが修正できていなければいけない。それなのに、なんだこの試合は!」
東大戦の引き分け後も、練習の雰囲気は普段と変わらなかった。それが結果に表れたのである。そのことも部員たちに自覚してほしかった。
早慶2回戦は4‐2で勝利。
優勝は慶応。早稲田は3.5ポイントの5位。
最後の最後に早慶戦で勝った。この白星を小宮山は「誤算」とまで言う。
「俺たちは弱くないんだ、と安堵(あんど)してしまったようで。夏の練習に向かうためにも、どうせならコテンパンにやられたほうが良かった」
その日は夜8時半までコーチを交えてのミーティング。春の総括だ。小宮山はこの間の部員たちの緩みをかんで含めるように話した。
そして「一球入魂」の夏練習を経て、秋季リーグ戦の幕が開いたのである。
(敬称略)
※参考文献:石井連藏『おとぎの村の球(ボール)投げ』三五館、1999年
1965年千葉県生まれ。早大4年時には79代主将。90年ドラフト1位でロッテ入団。横浜を経て02年にはニューヨーク・メッツでプレーし、千葉ロッテに復帰して09年引退。野球評論家として活躍する一方で12年より3年間、早大特別コーチを務める。2019年、早大第20代監督就任。