五つ目のポイント
〜中国がロシアに寄りすぎるのは危険だが、米中緩和の可能性も

 ロシアを支持するが過度に依存する必要はない。米中関係は緩和するかもしれないが、警戒意識は保たなければならない。

 この戦争は中国にとって、ロシア、米国との関係をうまく処理し、危機をチャンスに変える試練である。ロシアが完全に倒れることは中国にとって不利で、この戦争でロシアが中国により接近することになり、中国はひそかにロシアを支持することはできるが、ロシアに寄りすぎてはならない。戦争が終わればロシアは中国にさらに依存し、中国のエネルギー需要はよりよく解決でき、貿易面では欧州に取って代わるチャンスが生まれる。しかし、戦略的にロシアに依存してはいけない。中国の国力はその10倍もあり、軍事的にも自らを守る能力がある。

 今回の戦争は米中緩和に可能性をもたらした。だから、その可能性が存続する期間中はチャンスとしてうまく利用しなければならない。かといって、中国封じ込めの目標を捨てない米国に幻想を抱いてはならない。バイデン政権時代に、両国の関係を緩和する機会をつかまなければならない。トランプ政権がまた誕生したら、グローバル化はさらに後退し、米国の北米引きこもり、ドイツの再武装、ロシアと欧州の接近、日本の「正常化」、韓国とインドの台頭などにより、中国の外部環境、特に周辺環境が悪化するだろう。短期的には、中国は米国を跳び越えて世界の舞台の中央に進んではならない。

 世界の政治構造から見れば、いずれ中国と米国の共同統治への移行段階に入るだろう。しかし、米国の戦略の重心がずっとアジア太平洋から他のところへ移っていない。それは、その戦略的交渉の対象が依然として中国であることを示している。そのため、中国も西側のそばに立つことを選んでも無駄だ。欧米は中国の台頭を受け入れないからだ。これについては冷徹な認識を保たなければならない。