「両国で体験しているから言えることだが、日本の支援は本当に手厚い。日本はロックダウンやワクチンパスポートなどを実施しなかったし、人権も守っている。しかも、コロナの死亡者数は先進国で一番低い。それでも、ホテルの食事がまずいとか、政府の対応が遅いとか、日本人は文句が多いと思う。一度海外へ行かないと、日本のありがたみが分からないよね」(40代夫婦の夫)

 また、中国で飲食店や雑貨店などの店を営む人や中小企業の経営者からは、休業や営業時間短縮に伴う補償についても関心が高い。中国では、ロックダウンの繰り返しで、たくさんの企業や店が倒産に追い込まれている。日本では休業などコロナの影響を受けた事業者向けに支援金があるが、休業に伴う政府からの補償が一切ないからだ。

 例えば、日本人にもなじみのある上海の観光スポット、田子坊(ディエンヅファン)は、古い住宅を再開発したハイセンスなショップやレストランが集まっている。ところが、新型コロナウイルス感染拡大以降、高い賃料と売り上げの激減により田子坊では半分以上の店舗が撤退や廃業に追い込まれ、かつてのにぎわいはどこにもない。

「ゼロコロナはもう限界」
政府に方針転換を求める声

「病気で治療を直ちに受けられずに死んでもいい。失業でお金がなくなり餓死してもいい。しかし、コロナで死んではいけない――。今のゼロコロナ政策は、まさにこういうことではないか。もう限界だ!」

「今、欧州諸国が相次いでコロナ規制解除を宣言している。ウィズコロナが世界潮流となっている中で、われわれだけが取り残されていていいのか」

 悲鳴ともいえる声が、中国のSNSでたくさん発信されている。

 上海は中国最大の経済都市だ。先が見えない封鎖がもたらす経済への打撃は計り知れない。市民の間では現状の政策を続行するのは難しく、そろそろ方針転換するのではないかと国への期待が高まっている。実際、習近平国家主席は最近の談話の中で、「最小限の代価でコロナを抑えなければならない。正常な経済活動に影響を与えてはならない」と述べている。

 政府はこれまで経済成長こそがあったからこそ、国民が政府に一定の支持をもたらしてきたことをよく理解しているはずだ。このままゼロコロナ政策を続行して、不満が鬱積(うっせき)することは避けたいのは政府も同じではないだろうか。