『鎌倉殿の13人』に登場する源氏の武将、木曽義仲。将軍・源頼朝や義経ほど有名ではないが、平家討伐に大きく貢献した人物だ。『平家物語』でも義仲の栄枯盛衰が情感をもって描かれており、筆者は義仲が同作の第二の主役だと考えている。今回はそんな義仲の生い立ち、平家との戦いで見せた“意外な戦略”について、『平家物語』を基に解説する。(歴史学者 濱田浩一郎)
『平家物語』の第二の主人公
木曽義仲とはどんな人物か
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で木曽義仲を演じるのは、俳優の青木崇高さんだ。ドラマでのビジュアルは、ひげを生やしワイルド、そして勇猛な武将といった感じであり、われわれが抱く義仲のイメージにぴったりだ。これから、義仲の栄枯盛衰をどのように演じていくのか、とても楽しみである。
その義仲を、私は古典『平家物語』の第二の主役というふうに捉えている。それはなぜか。『平家物語』が義仲について記す分量の豊富さもさることながら、主人公・平清盛のように、義仲の栄枯盛衰が情感をもって描かれているからである。
『平家物語』は、義仲の波乱に富んだ前半生を次のように描いている。
「さて、その頃、信濃国に木曽義仲という源氏がいるとのうわさがあった。義仲は、源為義の次男・義賢の子である。義賢は久寿2(1155)年8月16日、鎌倉の源義平によって殺された。その時、義仲は2歳であった。その義仲を母が泣く泣く抱いて信濃国に行き、木曽の豪族、中原兼遠に『この子を何としても育てて、一人前にしていただきたい』と懇願。兼遠は願いを受け入れて、苦労を惜しまず、二十余年もの間、義仲を養育してきた」(『平家物語』を筆者が現代語訳)
これが『平家物語』における義仲の初登場シーンである。ここでは義仲の生い立ちが語られている。