家計防衛を
余儀なくされる消費者
当面の間、外国為替市場では、米ドルなどの主要通貨に対して円安圧力が高まると考えられる。中期の時間軸で考えると、投資資金は金利の低い通貨から、高い通貨に流入する。
金融政策が急速に正常化されはじめた米ドルの金利(米国債の流通利回り)には上昇圧力がかかっている。欧州中央銀行も予想よりも早いタイミングで量的金融緩和策を終了する可能性を示し、ドイツでは金利が上昇している。
ところが、主要先進国で唯一、日本銀行は緩和的な金融政策を継続する。内外の金融政策の方向性の違いは一段と鮮明化する。円は、より低いコストで資金を調達するための通貨として、位置付けが強まる。対して米ドルなどは資金を運用するための通貨として扱われ、円安傾向は鮮明となるだろう。
今後、世界的に物価上昇と経済成長率の低下が同時に進む可能性は高い。ウクライナ危機によって世界経済はグローバル化からブロック化に流れを変えた。供給制約が強まり、エネルギーや希少金属、穀物などの価格は上昇するだろう。また、供給網の遮断などによって国内外で企業の事業運営の効率性は低下する。
わが国では、少子高齢化によって需要が縮小均衡に向かう。90年代以降の日本経済の持ち直しを支えてきた自動車産業は、電気自動車シフトという逆風に直面している。
経済の実力が低下する中で、円安と物価の上昇が同時に進むことにより、わが国の交易条件の悪化は避けられない。小麦などの穀物や電力料金、ガソリンなど日常生活に不可欠なモノやサービスの価格はさらに上昇するだろう。
状況次第では、火力発電のための液化天然ガスの輸入と備蓄が減少し、電力供給不安が高まる恐れもある。企業は収益を確保するために、コスト上昇を価格に転嫁しなければならない。
業績悪化によって、わが国の給料が減少する展開も否定できない。物価上昇の一方で給料が増えないのは、最悪のパターンだ。わが国の家計運営は一段と厳しさを増す。所得と支出のバランスを見直し、生活水準の引き下げを余儀なくされる家庭は増えるだろう。