黒田東彦日銀総裁日銀が為替市場に催促される格好で、緩和策の部分的な修正を余儀なくされる日が近づいているように見える Photo:YOSHIKAZU TSUNO/gettyimages

50年ぶりの円安水準でも
黒田総裁は緩和姿勢を堅持

 為替相場で円安が急速に進んでいる。円相場は3月28日、2015年6月以来の円安水準となる125円台を一時的につけた。円の総合力を示す実質実効為替レートは、1972年以降、実に50年ぶりの円安水準にまで低下している。

 急速な円安の引き金となったのが、日本銀行による国債買いオペの発表だ。日銀は10年国債利回りを0%±0.25%のレンジ内に誘導する「イールドカーブ・コントロール(YCC)」政策を実施している。その10年国債利回りがレンジの上限に近づいたため、3月29日から31日までの間、10年国債を0.25%の利回りで無制限に買い入れることとなった。

 国債の買いオペは、購入代金を市中に供給することになるため、金融緩和効果をもたらす。これに先立ち、日銀の黒田総裁は3月18日の記者会見で、「原油高による物価上昇は一時的で、経済をサポートする金融緩和を続けることが必要」と強調した。金融緩和を堅持する日銀のスタンスは、金融政策の正常化を目指す主要中央銀行の動きと対照的であり、市場では更なる円安を予想する声も聞かれる。

 果たして、黒田総裁の発言を額面通りに受け止めてよいものだろうか。むしろ筆者の目には、日銀が為替市場に催促される格好で、緩和策の部分的な修正を余儀なくされる日が近づいているように見える。