リスキリングは人々の
選択肢を増やし、自由を広げる

 しかし、2020年1月のダボス会議で「リスキリング革命」が宣言されただけでは、ここまでリスキリングの動きは広まらなかっただろう。リスキリングが世界中で広まっている真の理由は、やはり「DX」と「コロナ禍」にある。

「リスキリング革命」宣言でリスキリングに注目が集まったその年に、新型コロナウイルスの感染が世界中へ広まった。コロナ禍は、人と人との接触を制限し、いかに非対面で生活を行うか、仕事を進めるか、コミュニケーションを図るかなど、あらゆる面でのデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速化させた。マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は、コロナ禍で企業のデジタル戦略が2年分加速したと述べている。

 ベストセラー『マッキンゼー流 最高の社風のつくり方』(日経BP)の著者であり、ニューヨークのテック系スタートアップ「ベガ・ファクター」の共同創業者であるニール・ドシ氏が言うようにDXというのは多くの場合、「デジタル変革」だけでなく、「社風・企業カルチャー変革」でもある。DXは個々の仕事の方法だけでなく、企業自体に大きな変革をもたらしている。これまでの仕事の方法は一変し、DX時代を生き抜くためには、新しいスキルを身につけるが必須となった。企業にとっても従業員のリスキリングは、企業が生き残るかどうかの命運を握る。DX時代の人材戦略として避けては通れないのである。

 しかし、リスキリングは決して強いられて行うものではない。リスキリングは、その人の仕事や生活の選択肢を増やし、自由を広げる。人生をより楽しみ、充実したものにするための機会が、時代の後押しと共に到来したと考えると、この世界的な潮流にワクワクしてこないだろうか。