一部の大学でとりわけ強い地元志向
名大に見る「モノづくり県」の気風

 まず北大を見ると、1~4位にランクインした企業・団体の顔ぶれは、北海道大学、北海道大学病院、札幌市役所、北海道庁と20年から全く変わっていない。北大卒の学生が、いかに出身大学や地元の行政機関を就職先として重視しているかが、よくわかるだろう。

 東大や京大でも同様の傾向が見られるが、国立大は研究・労働環境が恵まれていること、長引くコロナ禍によって就職活動をセーブしたり、民間企業への就職を様子見したりする学生が増えている可能性があることが考えられる。本州から離れているぶん地元志向が強いという、地理的な要因もありそうだ。

 地元志向という意味では、北海道に本社を置くニトリへの就職数も23人と前年に続いて多い。富士通、日立製作所など電機メーカーも根強い人気がある。

 次に東北大も、1位が東北大学病院、2位が東北大学と、やはり出身大学関連への就職が目立つ。3位以下を見ても、東北電力、大崎市民病院、仙台市役所、国立病院機構仙台医療センター、宮城県庁、仙台市立病院と、地元の企業・団体がかなり多い。楽天イーグルスを運営する楽天グループが民間企業でランクインしているのも、地元愛の強さといったところか。

 筑波大は、20年に続いて1位が筑波大学附属病院となったが、前年2位だった筑波大学はランク外となった。電機、IT、通信、半導体メーカー、自動車、精密など、大都市に事業展開する様々な企業に卒業生を送り出している。首都圏に近い立地であることから、地元志向は比較的薄いのかもしれない。

 名大は、20年に続きデンソーが1位、トヨタ自動車が2位となった。同じくトヨタ系の豊田自動織機やアイシン精機(現アイシン)といった地元企業をはじめ、三菱電機、富士通、ブラザー工業、三菱重工業、川崎重工業、パナソニック、ソニーグループ、本田技研工業と、製造業への就職が多いのが特徴だ。「モノづくり王国」といわれる愛知県に立地するだけあって、多くの卒業生が産業界へ進むようだ。

 阪大は、20年に1位だったパナソニックが5位にランクを下げ、三菱電機が就職先1位となった。関西電力、NTT西日本など上位には地元企業が多いが、全体として様々な企業に卒業生を送り出している。東京に次ぐ大都市に立地しているためか、地元志向はそれほど強くないように見える。

 一方神戸大は、1位が神戸大学医学部附属病院となり、上位には神戸市役所、兵庫県庁など自治体関連の団体も多い。阪大ではランキングに自治体の関連団体が1つも入らなかったのを見ると、同じ関西圏でも地元志向の強さに差があるようだ。また、清水建設やEY新日本有限責任監査法人など、他大学のランキングではあまり見られない企業にも、一定数の卒業生を送り込んでいる。

 そして九大は、前年に続いて九州大学病院が断トツとなった。その数は158人。次いで九州大学、九州電力、福岡県、福岡市、福岡銀行と、トップ10のうち6つの就職先が地元の企業・団体で占められている。北大と同じく、本州から離れているぶん地元志向が強いのかもしれない。民間企業では製造業への就職が多い。

 主要国立大の就職先は、これまでと変わらず「地元志向」を反映する結果となった。ただし、その強さは地域によって濃淡があるようだ。

*この記事は、株式会社大学通信の提供データを基に作成しています。

【ランキング表の見方】
2021年春の大学別の主な就職先。就職先(企業・団体)の名称は、原則としてアンケート調査時点の各大学の回答による。また、大学通信の調査方法によって表記しているため、正式名称と異なる場合がある。大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。大学院修了者を含む。(調査/大学通信)