justInCase(ジャストインケース)のコロナ助け合い保険justInCaseの公式サイトより

保険スタートアップの旗手として知られるjustInCase(ジャストインケース)が、販売していたコロナ保険で大失態を演じた。コロナ保険の新規契約を停止した上、既契約者に対しても入院一時金の支払いを減額すると発表したのだ。保険各社からはこの決定が、業界に対する消費者の信頼低下や、当局からの監督強化にまで波及するのではないかと、不安視する声が聞こえている。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

ジャストインケースの決定で
保険業界に広がる衝撃

「既契約にまで遡及(そきゅう)して保険金支払いを減額するのは、保険会社が破綻したときくらいだ。それを今回やったというのは衝撃的だ」

 少額短期保険会社の幹部は、保険スタートアップの旗手として知られるjustInCase(ジャストインケース)の決定に、驚きを隠せない様子でこう話す。

 ジャストインケースは2022年3月31日をもって、「コロナ助け合い保険」を含む同社の総合医療保険の販売停止を決定。さらに翌週の4月6日には既契約者に遡及し、保障内容の変更を決定した。

 同社の「コロナ助け合い保険」は保険料1000円以下で、新型コロナ陽性が判明し、医療機関に1泊2日以上の入院のほか、自宅やホテル等で1泊2日以上の療養という「みなし入院」でも、一時金10万円の保障が支払われる保険だ。保険料が手頃で、かつウェブサイトから簡単に申し込めるため、人気があった。

 ところが22年1月以降、コロナ第6波による感染が想定以上に急拡大。そこで4月7日以降、既契約者も含めて、医療機関に1泊2日以上入院した場合は、保険金を10分の1の1万円に減額し、10分の9をジャストインケースのグループ会社から、「お見舞金」という形で支払うと発表した。

 ただし、医療機関に入院しない自宅やホテル等での「みなし入院」は、お見舞金は支払われない。つまり、みなし入院は10万円から1万円へ、保障額が大幅に削減されるのだ。ちなみに、4月6日以前に入院開始の場合は、従来通りの保障となる。

 販売停止時点での契約者数は約5万5000件。22年3月の月次保険料収入は2990万円に対して、同月の保険金支払額は1億7720万円と、保険料収入に対して保険金支払額が大幅に超過していた。

 4月以降も保険料収入を超過した保険金支払いは続くことが予想されており、ジャストインケースは今回の変更を行わざるを得なくなった。畑加寿也社長は「想定外の事態で、契約者の方には本当に申し訳ない」と話す。

 約款には、保障内容が削減される可能性について言及しており、同社の対応に法的な問題はない。だが、なぜこのような前代未聞の事態に至ったのか。少短業界からは、今回の失態が業界全体へ波及するのではないかと、不安視する声が上がり始めている。