*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)『息子・娘を入れたい会社2022』の「親子で学ぶ注目業界『天気予報』」を転載したものです。
親世代には「IT業界はブラック」という固定観念を持つ人が少なくない。子どもがIT業界への就職を相談し、親が難色を示すケースが、これまでよく見られた。ところが、今や状況は様変わり。「就職先に迷っているなら、ITへ行け」という時代になった。その背景にある深刻な人材不足の現状と、足もとの採用戦線を分析する。一目でわかる「IT業界トレンド推移マップ」も参考にしてほしい。(取材・文/ダイヤモンド社 ヴァーティカルメディア編集部 副編集長 小尾拓也)
「親ブロック」のIT業界だが
今や状況は様変わり
親に反対され、子が内定を辞退せざるを得なくなる――。そんな「親ブロック」が起きやすいのがIT業界といわれている。
親世代が就活をしていた1980〜90年代、IT業界は歴史が浅く、まだ一般の学生にとっては縁遠い場所だった。
当時、IT業界の大半を占めていた業種は、企業の情報システムの企画、開発、保守、運用などを包括的に請け負うシステムインテグレーター(SIer)。開発環境は大手を頂点とした多重下請けのピラミッド構造になっていた。末端の現場ではエンジニアらが、納期に間に合わせるために徹夜で働くという低賃金・過重労働が常態化していた。
現在に至るまで業界で大きな売上シェアを占める彼らのイメージは、長い間、IT業界全体のイメージと重なってきた。
そのため親世代には、「IT業界はブラック」という固定観念を持つ人が今も少なくない。子どもがIT業界への就職を相談し、親が難色を示すケースが、これまでよく見られたのである。
ところが、今や状況は様変わり。「就職先に迷っているなら、ITへ行け」という時代になった。
日本経済におけるIT産業の存在感が高まる中、IT人材の需要は供給が追いつかないほど増加している。経済産業省によると、2030年には最大で約79万人の深刻な人材不足に陥る見通しだ。
「ITスキルを身に付ければ将来食いっぱぐれることはない」と、本命ではないIT業界に就職し、数年後に希望の業界へ転職する若者も増えているという。
人材の取り合いが起きているのは、IT業界が新たな局面を迎えているためだ。業界の内情と経緯をおさらいし、これからどこへ向かうのかを分析しよう。